2019 Fiscal Year Research-status Report
中世フランス語版『テンプル騎士団会則』の言語地理学的・文献学的語彙研究
Project/Area Number |
18K00443
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松村 剛 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00229535)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中世フランス語 / フランス語史 / 語彙論 / 文献学 / 言語地理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画に基づき、本年度は以下の研究を行なった。 1260年頃に聖地で作成された中世フランス語版『テンプル騎士団会則』(Regle du Temple de Jerusalem) に関して、パリのフランス国立図書館 (Bibiliotheque nationale de France) 所蔵のフランス語写本第1997番の写真版と、1886年に Henri de Curzon がフランス歴史学会の叢書として上梓した校訂版 (Paris, Renouard) と、2009年に Giovanni Amatuccio がイタリア語の翻訳と注釈を添えて出版した校訂版 (Galatina, Congedo) とを比較検討し、確実なテキストを作成する作業を続行した。その過程で、既存の2点の校訂版の解釈が妥当ではない可能性のある箇所に関しては、写本に基づいてより正確と思われる仮説を提示した。パリに出張し、コレージュ・ド・フランス名誉教授 Michel Zink 氏と文献学的な視点からの研究打ち合わせを行なった。他方、各種辞書および先行研究における中世フランス語版『テンプル騎士団会則』の引用を再検討し、それらの解釈が妥当であるかを文献学的に調査する作業も続行した。さらに、中世フランス語版『テンプル騎士団会則』に含まれる、フランス語史的、言語地理学的に注目すべき単語・表現を収集し、この作品の意義を裏付ける点を強調し、フランス語史ならびに言語地理学における従来の知見を補完する作業を続けて行なった。また、関連するラテン語の作品ならびにフランス語の作品を収集し、それらを批判的に検討して、そこに含まれる問題点と意義を明らかにしつつ、補足的な情報に焦点を当てる作業も行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1260年頃に聖地で作成された中世フランス語版『テンプル騎士団会則』のパリ、フランス国立図書館所蔵のフランス語写本第1997番の写真版および、1886年に Henri de Curzon が刊行した校訂版と、2009年に Giovanni Amatuccio がイタリア語の翻訳と注釈を添えて出版した校訂版とを照合する作業を予定通りに進めている状況である。聖地で同じ時期に書かれた中世フランス語の文献などに関しても、それらの作品の言語的特徴を調査している。このように当初の研究実施計画に従って進めている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画に従い、2020年度に以下のような研究を推進する予定である。 前年度までの研究に基づき、中世フランス語『テンプル騎士団会則』のテキスト確定の作業を、パリ、フランス国立図書館所蔵フランス語写本第1997番の写真版と、Henri de Curzon が1886年に刊行した校訂版と、Giovanni Amatuccio が2009年に上梓した校訂版とを比較検討する作業に基づいて、完成させる。他方、各種辞書および先行研究における『テンプル騎士団会則』の引用再検討の作業を完成させ、それらの解釈の妥当性を文献学的に調査し、従来の知見がいかに補足できるかをまとめつつ、『テンプル騎士団会則』に含まれる、フランス語史および言語地理学の観点から興味深い単語・表現の収集をまとめ、それらの語彙の意義を明確にする。また、関連するラテン語作品・フランス語作品の収集ならびに批判的検討を続け、その問題点と意義を明らかにしつつ、従来の語彙研究への補足を行なう。
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