2022 Fiscal Year Annual Research Report
The Search for Linguistic Modernity in Italy in the 19th century ---- with a focus on Manzoni and Leopardi
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18K00444
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
糟谷 啓介 一橋大学, その他部局等, 名誉教授 (10192535)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マンゾーニ / レオパルディ / 言語論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、レオパルディの言語論の思想史的意義を追究するとともに、研究の総括として、マンゾーニとレオパルディの言語論の比較を行なった。 レオパルディの言語論の特徴は、言語の多様性を肯定し、言語記号が指示性と象徴性の両面を含む運動体であることを強調した点にある。この認識の根幹にあるのがtermineとparolaの対立である。前者は明晰な一義的記号として科学言語の核をなすのに対して、後者は多義性と表現性を求める詩的言語の核をなす。レオパルディは、言語の近代性が一義的なterminiの発展によって獲得されることは認めつつ、過度な一義性の探求は言語を貧困化させると主張した。レオパルディがフランス語のいわゆる「明晰性」や「合理性」を評価しなかった理由はここにある。その一方、レオパルディは伝統的イタリア語の「純粋性」を頑迷に守ろうとする純粋主義者たちを手厳しく批判し、イタリア語に「ヨーロッパ的な」国際性を獲得させようとした。つまり、レオパルディの言語論には、近代批判を内包する近代性の追求という困難な方向性が刻み込まれていたことが明らかになった。 こうしたレオパルディの言語論と比べると、マンゾーニの言語論には、言語を固定的な記号の集合とみなす傾向が見られる。このような方向性の違いが、同じく18世紀フランス啓蒙主義の言語論を出発点としながらも、両者の言語論に異なる帰結をもたらした。たとえばそれは、イタリアの「言語問題」に対する両者の回答の違いに見出すことができる。マンゾーニは書き言葉の意義を認めず、現代のフィレンツェ口語慣用に基づく言語規範を打ち立てようとしたが、レオパルディはフィレンツェ中心主義に反対し、書き言葉のレベルでの共通語の形成に重きをおいていた。このような言語政策の面での対立が、両者の言語認識の違いから来ることを具体的に明らかにしたことも、本研究の成果である。
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Research Products
(1 results)