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2023 Fiscal Year Research-status Report

The Black Celts: Analysis of the racial discourse on the Celts in the 19th-century Celtic Fringe

Research Project

Project/Area Number 18K00447
Research InstitutionShizuoka University

Principal Investigator

森野 聡子  静岡大学, 情報学部, 名誉教授 (90213040)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 香戸 美智子  京都外国語大学, 外国語学部, 教授 (60748713)
Project Period (FY) 2018-04-01 – 2025-03-31
Keywordsケルト人種論 / ウェールズ / 夢想的ケルト人 / 島のケルト / インド=ヨーロッパ語族 / 血清学 / 科学と社会 / フォークロア研究
Outline of Annual Research Achievements

研究代表者は、インド=ヨーロッパ語族研究、考古学上の三時代区分の導入、形質人類学の発展といった諸学が、ブリテン諸島では大陸ヨーロッパとは異なる形でケルト人種論を形成していったことを明らかにし、考察結果を「ヴィクトリア朝のケルト人はなぜ「黒かった」のか」として発表した。すなわち、石器時代のヨーロッパ先住民(非インド=ヨーロッパ語族で形質的には黒髪・黒い肌の「イベリア人」とされた)が、大陸ではバスクなど一部地域を除き、インド=ヨーロッパ語族で金属を扱い、金髪・白い肌のケルト人によって駆逐されたのに対し、ブリテン諸島では侵入者のケルト人と混血した先住民の子孫がケルト諸語地域、とりわけアイルランド西部、スコットランド・ハイランズ、そしてウェールズ南部に残っていると考えられたのである。このブリテン独自の「島のケルト人」言説は、アイルランドでは文芸復興という文化ナショナリズムの文脈において人種論的面よりも、同じく19世紀に発展した、実利的・論理的なイングランド人に対する夢想的ケルト人という二項対立と結びついて受容された。一方、中世以来、ブリテン島最古の住民という民族意識をアイデンティティの根幹としてきたウェールズでは、ケルト来島以前の先住民の血統を引くという議論は彼らの主張の正当性として積極的に活用されたが、ウェールズの文化人が「マビノギオン」のような伝統文学を「夢想的ケルト」の想像力の所産であると喧伝することはなかった。なお、このケルティシズム的言説が日本におけるケルト諸語文学の翻訳・受容に与えた影響については、2023年度オランダで開催された第17回国際ケルト学会で発表を行った。
研究分担者は、コロナ禍により現地調査の予定が数年延期されたため、大幅に研究方針の変更が強いられたが、国内で可能な文献調査などに基づき、血清学を中心としたブリテン諸島のケルト系住民について研究を進めた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

ブリテン諸島のケルト諸語地域住民を「黒いケルト人」とする言説の形成過程については、文献調査で確認できる範囲ではあるが、ほぼ解明することができたと考えるが、本研究課題の目的の一つである、この言説が、当時のケルト諸語地域でどのように受容されたのかについては、まだ調査不足である。
研究分担者については、現地調査を中心に研究計画を立てていたため、新型コロナウィルスの影響で海外渡航が実行できなかったことから、研究計画の大幅な変更を余儀なくされており、研究は遅延している状況である。

Strategy for Future Research Activity

研究代表者は、19世紀に形成された「島のケルト人」についての言説の受容について、当時の文献資料より、さらに実証的に調査することを計画している。ウェールズでは、19世紀末に始まったフォークロア研究において、妖精伝承の起源をケルト人到来以前の「イベリア系先住民」の記憶とする学説が生まれている。妖精=先住民説はウェールズ人研究者に限らず、19世紀~20世紀初頭にかけてブリテン諸島において広く流布した説であり、それらとの関連を見ていくとともに、アイルランド及びスコットランドの妖精学とも比較したい。2024年度より中央大学人文科学研究所の研究チーム「妖精とは何か」に客員研究員として参加するため、チームでの活動と連動して情報交換や調査を進める予定である。また、ブリテン諸島のケルト諸語が先住民の非インド=ヨーロッパ語の影響を受けているとするウェールズ出身のケルト学者John Rhys (1840-1915)、彼の弟子であるJohn Morris-Jones (1864-1929)ら、いわゆる「オックスフォード・ウェルッシュ」の言語論について分析し、そのイデオロギー的背景を明らかにしたい。
研究分担者は、現地調査の実現に尽力するとともに、引き続き、ブリテン諸島におけるケルトに関するヒトの集団について、主に20世紀の血清学を中心に科学と社会の観点から研究を継続する。

Causes of Carryover

新型コロナウィルスの影響による渡航制限を受け、当初の研究計画を変更・遅延せざるを得なかったため、研究期間を延長したことにより、次年度使用額が生じている。次年度においては、研究が遅延している部分について、文献資料の収集や現地調査を行う予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2023

All Presentation (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results) Book (1 results)

  • [Presentation] Presenting the Mabinogion to the Japanese Reader: Challenges and Afterthoughts2023

    • Author(s)
      Ito-Morino, Satoko
    • Organizer
      The XVIIth International Congress of Celtic Studies
    • Int'l Joint Research
  • [Book] ヴィクトリア朝のケルト人はなぜ「黒かった」のか(『ケルト学の現在』)2023

    • Author(s)
      森野聡子
    • Total Pages
      19
    • Publisher
      三元社

URL: 

Published: 2024-12-25  

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