2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00448
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松澤 和宏 名古屋大学, 人文学研究科, 名誉教授 (30219422)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | フローベール / 『純な心』 / 宗教 / 倫理 / 作中人物 / 草稿研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年も引き続きフローベール文学の倫理的宗教的側面位光をあてる研究を続け、その成果の一端は日本フランス語フランス文学会欧文学術誌 Littera にフランス語論文として掲載された。Kazuhiro Matsuzawa、”La transformation interieure de Madame Aubain dans ”Un coeur simple” de Flaubert”, Littera, Revue de Langue et Litterature Francaises, n.6, mars 2021, Societe Japonaise de Langue et Litterature Francaises, mars 2021, pp.87-101. この論文は、これまで冷淡な女主人としてみなされてきた『純な心』のオバン夫人が、献身的な女中フェリシテに次第に心を動かされ、しまいに困窮の中にあってもそれなりの年金を遺贈するに至るプロセスを、作家の草稿の分析を通して明らかにしたものである。フランス人のフローベール研究者を含む編集委員の高い評価を得ることができて、これまでにない新たな解釈を提示することができたことを確認できたことは、大きな成果であった。 またフローベール『サラムボー』の校訂版の詳細な書評を日本フランス語フランス文学会の書評 Cahier誌に発表した。松澤和宏、「Gustave Flaubert Reve d'Orient, Plans et Scenario de Salammbo, edition et introduction par Atsuko Organe, Droz, 2016.」, Cahier 2021年3月, pp.21-22. 2021年12月にパリで催される国際シンポジウム「フローベールとイメージ」に研究発表者として招待され、これを受諾した。 2019年に東北大で催された「語りと主観性」のシンポジウムの刊行に向けて論文の原稿を執筆した。刊行は 2021年度中の予定である。また現在『フローベール生誕二百年記念論集』(水声社より11月に刊行予定)を 2021年度中の刊行目指して編者として準備にあたっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
しばらく論文執筆が『純な心』に集中したが、この作品がフローベール文学の宗教的倫理的側面が最もよく表現された作品であるためである。学会誌欧文学術誌の編集委員のフランス人研究者からも高く評価され、フローベール文学における<愛と死と信>というテーマの重要性を確認することができた。2021年はフローベール生誕二百年にあたり、フランスでのシンポジウム「フローベールとイメージ」(12月)および『フローベール生誕200年記念論集』(水声社、11月刊行予定)において、引き続きこのテーマに関した研究成果を発表する準備を現在順調に進めているところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度中の四つの研究発表を予定している。 1)フランスでのシンポジウムFlaubert en images (パリ、12月)での研究発表、 2)『フローベール生誕二百年記念論集』(水声社 2021年11月刊行予定)での論文発表、 3)論文集『語りと主観性』(ひつじ書房、 2022年3月刊行予定)掲載予定の論文 4)国際シンポジウム「ロマン主義と第二帝政の文学」(2022年3月、立教大学、中京大学)での研究発表 以上の研究発表を通して、フロ~ベール文学の倫理的宗教的側面に光をあてる研究を、様々な作品に対象を広げて、発表していく予定である。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍のために、予定していたフランス滞在計画を中止にしたためである。
|