2022 Fiscal Year Annual Research Report
An ethical and religious reading of Flaubert's literature
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18K00448
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松澤 和宏 名古屋大学, 人文学研究科, 名誉教授 (30219422)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 宗教 / 倫理 / フローベール / 小説の語り / 自由間接話法 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度に実施した研究の成果として、以下のものがある。 (1)2022年12月にパリで催された国際シンポジウム『イマージュのフローベール』において研究発表「『『ボヴァリー夫人』と『純な心』における愛する死者の現存とイマージュ』」をフランス語で行なった。2024年度内にフランスで論文集が刊行予定である。(2) 2023年3月に立教大学にて催された国際シンポジウム「ロマン主義と第二帝政期の文学」にて研究発表「ロマン主義の変貌ーバルザック『現代史の裏面と『『感情教育』」をフランス語で行なった。(3)論文『フローベールとメーストル 』(日本フランス語フランス文学会中部支部 研究論集 , 2023年3月)を刊行した。 研究期間全体を通じて、フローベール文学の倫理的宗教的な側面に以下の研究を通して光を当てることができた。 (1) 『ボヴァリー夫人』や『純な心』において愛の対象がその死後にも現存し続けることを日本語とフランス語の論文で明らかにした。これは、協議や制度としての宗教ではなく、まさに宗教的なものの現存であり、近年のフローベール研究の一部に見られる無神論的解釈とは異なる側面に光を当てることができた。(2)また倫理的側面としては、『『感情教育』における主人公フレデリックとアルヌー夫妻の関係を忠実さという観点から読み解くことができることを示した。これは恋愛と金銭の物語の観点を超える第三の観点である。(3)作家の生誕200年を記念した論文集『フローベール 文学と現代性の行方』(水声社,2021年)を編著者として刊行することができ、近年の研究動向を俯瞰する論考「フローベール、19世紀、未来の読者」を「序」として執筆した。(4) フルーベールにおけるいわゆる「視点」と自由間接話法についての論考を発表し、技法上の問題が倫理や宗教的なテーマと深く結びついていることを示した。
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