2018 Fiscal Year Research-status Report
新聞・雑誌を通して1800年前後のドイツ文学の公共圏への関与を明らかにする試み
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18K00450
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
亀井 一 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00242793)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 一般ドイツ文庫 / ドイツ啓蒙主義 / 公共性 / メディア論 / ラファーター / メンデルスゾーン / 魂の不死 / ジャン・パウル |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に従って、フリードリヒ・ニコライ編集『一般ドイツ文庫』の書評記事の分析に取り組んだ。特に、1769年に起きたラファーター=メンデルスゾーン論争の関連で、『一般ドイツ文庫』の果たした役割と、同時代の公衆について調査した。 ラファーター=メンデルスゾーン論争では、ユダヤ人啓蒙主義者メンデルスゾーンの改宗の是非が争点になったのだが、その発端は、ラファーターがシャルル・ボネ『転生論』ドイツ語訳につけたメンデルスゾーンへの献辞だった。魂の不死について、ボネとメンデルスゾーンの見解にそれほどの違いはない。論争は当事者の意図を超えて公衆の間で加熱していった。そのような状況の中で、『一般ドイツ文庫』は、公衆に対して議論の規範を示そうとしたのだった。『ドイツ一般文庫』(13巻2号)の評者は、寛容という啓蒙主義的立場から事態の収拾を目指した。また、論争とは別立てでボネ『転生論』を論じた。それはしかしとりもなおさず、当時の公衆が規範を必要とするほど偏見にとらわれていたということでもある。ユダヤ人に対する偏見、千年王国的な期待といった反啓蒙的な議論が根深く残っていたことを記事から読み取るのは難しくない。カントは、1784年『啓蒙とは何か』において、啓蒙を、社会的な地位を離れた自由な人々による議論に基礎づけた。しかし、議論する公衆の現実は、カントのモデルに到底及ばなかった。 ジャン・パウル『抜き書き帳』からは、地方の一青年が『一般ドイツ文庫』を通して啓蒙主義を受容していく過程を読み取ることができる。ボネの転生論は、ジャン・パウルのテクストにおける主要モチーフとなるが、その契機になったのも、おそらく『一般ドイツ文庫』である。『一般ドイツ文庫』13巻2号を読んだのは1779年。それから翌年にかけて、ボネ、ラファーター、メンデルスゾーンのテクストから集中的に抜き書きをしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新聞・雑誌調査は、予想以上に大量の資料を分析しなければならず、今年度は成果を公表することができなかった。しかし、ラファーター=メンデルスゾーン論争については、すでに論文を提出し、審査の結果を待っているところである。『抜き書き帳』については、「魂の不死」をめぐるそれ以降の議論と合わせて、後日、論文にまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間第二年度は、『一般文学新聞』の調査を行う。当初計画では、創刊年で『ドイツ一般文庫』との比較分析をする予定だったが、第一年度と同様、テーマを決めて調査を進めることにした。 編者の一人であるクリスチアン・ゴットフリート・シュッツは、カントとの直接の交流もあり、『一般文学新聞』が批判哲学の受容において一定の役割を果たしたこともよく知られている。カント受容を軸に、『一般ドイツ文庫』『アテネウム』と比較する。また、第一年度の研究でテーマになった「公衆」が、『一般文学新聞』においてどのように現れてくるのかについても、上記テーマにあわせて調査する。 新聞調査は、予想以上に大量の資料分析をしなければならないことが判った。二次文献を手がかりとして効率よく作業をすすめたい。調査の進度によっては、『アテネウム』研究は、第三年度に延期し、ノヴァーリス研究と同時に行う。 当初計画では、第二年度は国内図書館で『一般ドイツ文庫』の現物調査をする予定だったが、第三年度計画を繰り上げる形で、ドイツで『一般文学新聞』『一般ドイツ文庫』の現物調査をする。
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Causes of Carryover |
第二年度にドイツで現物調査をすることにしたので、資金を残すことにした。
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Research Products
(1 results)