2019 Fiscal Year Research-status Report
グランゴール作演出パリ入市式における16世紀フランス王権とパリ市民の研究
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18K00454
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
平手 友彦 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (10314709)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | パリ / 古地図 / 入市式 / 活人画 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年9月16日から同月29日までパリ国立図書館で資料収集を行い、ピエール・グランゴールによる1514年と1517年の二つの入市式のサン・ドニ通りで行われた活人画を分析した。1514年の入市式については、グランゴールは彼が演劇集団の「阿呆の母」のような明確な表象で関わってはいないが、当時の政治状況を巧みに利用して王権への接近したことを明らかにすることができた。この研究成果の一部を論文「ピエール・グランゴールによる1514年パリ入市式」(『CORRESPONDANCESコレスポンダンス 北村卓教授・岩根久教授・和田章男教授退職記念論文集』朝日出版社、2020年3月、pp.3-18所収)として発表した。 また1517年入市式については、昨年度の調査で収集した16世紀のパリ古地図の考察から得た知見をもとに、パリのサン・ドニ通りという都市空間の中で入市式がどのように展開されたかを分析した。この分析では、当時のパリ案内の書『古代の華』が採用した「街路リスト」を詳細に検討し、その記述とパリ古地図の描写を照合して入市式の実際を立体的に明らかにすることができた。分析の過程で、「パリ市の歴史」、「フランス国王系図」、「街路リスト」などから成る『古代の華』が、既存のテクストの寄せ集めであり、そのヴァリアントから『パリの通りと教会』という個別のテクストの問題も明らかにすることができた。これら研究成果は、「パリ古地図のサン・ドニ通り ー1517年パリ入市式とパリ案内の書『古代の華』ー」(『欧米文化研究』第26号、2019年12月、pp.59-80)として発表した。 また、グランゴールによると思われる残りの五つの入市式への関与については、『パリ市当局記録』、『フランス儀典』などで引き続き分析を続けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ピエール・グランゴールによる1514年と1517年の入市式のテクストを収集し、パリの地誌と関連づけて分析を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1517年の入市式のテクストについては完全に分析を終えていないために、今年度はまずこのテクスト分析を行う。そして、グランゴールによると思われる残りの入市式への関与についても引き続き分析を続ける。 また、入市式を目撃したと思われる当時のパリの住民の日記などの収集を行う予定であるが、新型コロナウイルス感染の影響でパリでの資料収集・調査を行うことができなければ今後の研究計画を変更する必要が生じる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は物品費で購入予定の書籍が未入荷のために生じた。翌年度に入荷したら使用する。
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