2018 Fiscal Year Research-status Report
ボードレール『悪の華』における「北方」的特質の研究
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18K00456
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
清水 まさ志 宮崎大学, 語学教育センター, 准教授 (90762047)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ボードレール / 悪の華 / 北方 / 風景 / 個性 / ホフマン / 熱狂的旅人 / 熱狂 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、まず共著書『象徴主義と風景 ボードレールからプルーストまで』を刊行した。担当部分である「ボードレールにおける風景と個性」において、風景画は外的自然をただ写すばかりでなく芸術家自身の個性を映し出さなければならないというボードレールの思考をたどり、詩篇「風景」を読み解いた。詩篇「風景」は詩集『悪の華』再版において創設された章「パリ情景」の冒頭を飾る詩篇であり、この研究は令和2年度に計画を予定していた「パリ情景」における北方性の分析を先取るものである。そしてこのボードレールの「個性」に対する考え方こそ、現代社会を生きるわれわれが個々人において精神性を持った存在として生を実感する手がかりを与えるものである。 次に日本フランス語フランス文学会2018年度秋季大会において、「ボードレールにおけるホフマンの影響―「熱狂的旅人」を巡って」と題して研究発表を行った。この発表は、美術批評『1846年のサロン』に現れる「熱狂的旅人」という表現から、ボードレールにおけるホフマンの影響を探り、特にボードレールにおける「熱狂」の意義を明らかにしたものである。この研究は、平成30年度に予定していた「スプリーンと理想」の芸術詩群の分析と「反逆」の章の分析を横断的につないだものであり、芸術詩群に含まれる詩篇「地獄のドン・ジュアン」を「反逆」の章に通じる「北方的」芸術家像の発端とみなし、ドイツ作家ホフマンが作り出した「熱狂的旅人」との関連を解明した。こうした提示の仕方を取ることで、これまでのボードレール研究にない「熱狂」の新しい解釈を提出することができた。さらにパリに出張することで、現地において資料を収集するとともに、ボードレールが美術批評において取り上げた絵画作品を美術館で詳しく検証することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画を、その後の研究状況に従って、あるいは個別に成果を発表するに当たって、取り上げ方、焦点の当て方の点で変えている部分もあるが、全体においてボードレールの詩集『悪の華』における「北方」的特質を解明する目的に応じた内容で進展している。研究計画を横断する形で、すでに令和2年度の研究計画を先取りしている部分もあり、また平成30年度の研究計画に照らして提示の仕方を工夫している部分もあるが、内容的には研究計画に沿っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策に関して、研究計画の大きな変更はない。ただし、平成30年度の研究実績にあるように、個別に研究成果を発表していくさいに、提示の仕方等を工夫し、より本研究がボードレール研究および現代社会において持つ意義を明確にしていきたいと考えている。
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Research Products
(2 results)