2021 Fiscal Year Research-status Report
ボードレール『悪の華』における「北方」的特質の研究
Project/Area Number |
18K00456
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
清水 まさ志 鳥取大学, 地域価値創造研究教育機構, 准教授 (90762047)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ボードレール / 悪の華 / 北方 / 日本近代文学 / フランス近代歌曲 / ワルツ / ホフマン / トマス・ド・クインシー |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、まず鳥取大学の公開講座において「フランス詩への誘い~21世紀にボードレールを読む~」と題して講演を行った。一般を対象としたこの講演において、日本の近代文学の発展においてボードレールが大きな寄与を果たし、また21世紀の現代社会においてもボードレールが投げかけた問いが大きな意義を持つことを述べ、本研究の意義を一般に伝える良い機会となった。次に、「シャルル・ボードレールをめぐる詩と音楽~愛する人と夢見る風景~」と題し、ボードレールの詩にインスピレーションを与えた作曲家の作品、そして彼の詩に影響を受けた後世の作曲家の作品を、レクチャー・コンサートとして宮崎県立芸術劇場において公演を行った。本公演は、令和3年度「みやざきの舞台芸術」採択公演であり、一般に広くボードレールの詩の魅力を伝えることができたとともに、内容的には平成31年度に予定されていた『悪の華』の「スプリーンと理想」に含まれる恋愛詩群の分析を公表したものである。またこの公演を機縁として、ボードレールと音楽に関するテーマを、ドイツ・オーストリアを発端として19世紀の文化に大きな影響を与えたワルツという側面から分析を行い、査読付き論文「ボードレールとワルツ」を学術誌に発表した。最後に、京都大学人文科学研究所主催ボードレール生誕200周年記念シンポジウムにおいて「生きること、生き直すこと-ボードレールにおける幼年期の発見-」と題して研究発表を行った。ボードレールの「北方」性は、美の相対主義に基づき、美の個性を時代と風土の要素に求めるものであるが、これは同時に美の個性において個人の感受性の役割の大きさと、人間にとって感受性を形成しかつ最も大きな部分を占める幼年期の重要性を認める主張とつながり、本研究課題を別の角度からまとめたものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度はコロナ禍の影響で研究は進めていたもののその成果を公表する機会に恵まれなかったが、課題を延長することで、その成果を令和3年度の成果とともに十分公表することができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
課題を再度延長することにより、まだ十分に終えられていない計画を進める。まず、平成30年度に予定していた『悪の華』の「スプリーンと理想」に含まれる「芸術詩群」の研究について、まだ分析が終わっていない詩篇VIIからXXIの分析を行う。また平成31年度に予定されていた3人の女性に捧げられた「恋愛詩群」に関する研究に関して、令和3年度にレクチャー・コンサートとして成果を公表したが、さらに風土と女性の観点から分析を進め論文として著す。また、令和2年度に予定されていた「パリ情景」の研究に関して、北ヨーロッパの近代都市を詩に歌うという、まさにボードレールの「北方」性が最も顕著に表れた詩篇たちを分析し、研究発表あるいは論文として公表する。
|
Causes of Carryover |
フランス・パリへの研究調査費として予定していたものだが、コロナ禍で海外渡航ができず、一部を研究用の書籍の購入に充てた。海外渡航が可能な場合は、その費用の一部に充てる予定であるが、できない場合は書籍の購入、学会への旅費等に充てる。
|
Research Products
(2 results)