2019 Fiscal Year Research-status Report
亡命ポーランドと亡命ロシアにおける「場所」に関する比較文化的研究
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18K00460
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
小椋 彩 東洋大学, 文学部, 助教 (10438997)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 亡命文化 / ポーランド文学 / ロシア文学 / ゴモリツキ / チャプスキ / レーミゾフ |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は本プロジェクトの2年目にあたり,資料収集・分析に加えてこれまでの研究成果公開に努めた. プロジェクト初年度に行ったポーランド独立100年記念国際学会での報告をもとに「「亡命作家」ゴモリツキのアイデンティティをめぐって」を執筆,2020年3月にオンラインジャーナル誌上に公開された(英訳版が2020年春刊行予定). 2019年6月,国際学会(スラヴ・ユーラシア学会)において,アーカイブ資料をもとに1950年代のパリにおける亡命ロシア文化の諸相(亡命ロシアと亡命ポーランドの交流と文化活動の詳細,ロシア研究者・米川正夫と画家・成井弘文の日本人2名と戦後パリの亡命ロシアとの交際,ロシア・アヴァンギャルドに連なる画家で戦後,東京でロシア語教育に尽力したワルワーラ・ブブノワ関連の未刊行資料について等)発表した.この発表に加筆訂正を加えた論文を東京大学スラヴ文学研究室紀要に投稿、現在印刷中である(2020年6月刊行予定). また,本プロジェクトで昨年度に日本へ招聘したピョートル・ミツネル博士(ステファン・ヴィシンスキ枢機卿大学)による戦間期ポーランドの亡命ロシアの文化活動に関する講義録(英語)への解説を『スラブ学論集』に寄稿した(2020年6月刊行予定). これらの成果から,欧米のみならず日本も含む世界各地のロシア・ディアスポラ間で,戦間期から戦後にかけてかなり活発な交流があったこと,ディアスポラの地域的特性が亡命者のアイデンティティ形成に少なからぬ影響を与えることを明らかにした.とくに,ポーランドの亡命ロシアの代表的詩人の一人レオン・ゴモリツキに関する論考では,詩人の出自がアイデンティティ形成や創作に及ぼした影響について新味ある成果を提示できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ロシアとポーランドの亡命芸術家のアイデンティティの問題に関する調査研究という本プロジェクトの目的のため,初年度に引き続き2019年度も資料収集と分析,成果公開を積極的に行うことができたため,現在までのところおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年に参加を予定していた国際学会が中止や延期を余儀なくされており,研究者同士の意見交換や資料収集も行えないことから,この先多少の遅延が予想されるが,これまでに得た資料と人脈,オンラインのリソース等を活かしてさらなる研究蓄積に確実につなげたい.
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Causes of Carryover |
講演会を予定していた海外研究者の都合がつかなくなり招聘を取りやめたため使用額に変更が生じた.今年度に講演会を再計画している.
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