2019 Fiscal Year Research-status Report
Function of image in Goethe's color theory
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18K00461
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
濱中 春 法政大学, 社会学部, 教授 (00294356)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゲーテ / ニュートン / 色彩論 / 光学 / 図像 / イメージの物質性 / 脱神話化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、まず、『色彩論』の「論争篇」において『光学』の図が批判されている箇所を精査し、そこでニュートンの理論と図の何が問題とされているのか、また、『色彩論』のどの図版がそれらに対応するのかを確認した。その結果、『色彩論』では『光学』第一篇にふくまれる八種類の実験や命題への批判において図が問題とされていること、また、『色彩論』のテクストでは、ニュートンの光学理論と図にたいするゲーテの批判の主旨はほぼ一貫しているが、図版では、ニュートンの図とゲーテの図のあいだには、図法や技法の変更、若干の変更をともなった再現、大幅な改変、対置、再編と解体など、多様な関係が存在することが明らかになった。 また、ドイツのヴァイマルのゲーテ国立博物館とゲーテ・シラー文書館で、ゲーテの手稿のなかに描きこまれた図や、『色彩論』の図版の下絵を調査し、図の細部の表現を確認したり、図版の作成過程を跡づけるとともに、アンナ・アマーリア大公妃図書館で、17・18世紀の光学の文献の図版を調査・収集した。イギリスの大英図書館およびケンブリッジ大学図書館においては、『光学』のさまざまな版の図版の調査と、17・18世紀の光学の図版の調査をおこなった。 そして、『光学』第一篇第一部の命題六と第二部の命題八にたいするゲーテの批判を図版という観点から考察した。前者については、ゲーテとニュートンの図版を表象ではなく物質としてとらえると、いずれにおいても色彩がそのものとして現前してくることが明らかになった。また、後者にかんしては、ゲーテがグリッドや三角形という幾何学的な図形でニュートンの理論を図像化することによって、18世紀におけるニュートンの受容のあり方を批判するとともに、ニュートンの光学理論を脱神話化しようとしていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニュートンの『光学』の図にたいするゲーテの批判の全体像を把握するとともに、『光学』の二つの命題にたいするゲーテの批判にかかわる『色彩論』と『光学』の図の比較・分析をおこない、両者の「図像論争」の内実にかんする考察を進めることができた。 また、『色彩論』の図版の作成過程や、『光学』のさまざまな版における図版の実態も把握することができたほか、ゲーテとニュートンの図版をとりまく歴史的なコンテクストを把握するために、17・18世紀の光学の図版の調査と収集も進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に把握した、ニュートンの『光学』の図にたいするゲーテの批判の全体像にもとづいて、『光学』と『色彩論』の図の比較・考察を進めていく。 その際には、ニュートンとゲーテの科学思想や、光学および色彩研究の歴史、イメージ研究にかんする二次文献も調査・収集し、内容を検討して、個々の図の分析に活用する。 また、17・18世紀の光学の図像の調査と収集も継続して進める。
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