2020 Fiscal Year Research-status Report
Function of image in Goethe's color theory
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18K00461
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
濱中 春 法政大学, 社会学部, 教授 (00294356)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゲーテ / ニュートン / 色彩論 / 光学 / 図像 / 像行為 / 光学的視覚 / 図像学的視覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、ニュートンの『光学』第一篇第一部の実験9と実験14にたいするゲーテの批判に対応した『色彩論』の図版VIIIとXIIについて考察をおこなった。 図版VIIIでは、ニュートンが実験9を図解している図が、構成、構図、描写の各面において大幅に改変されていることに着目した。光の描写の変更は、ニュートンの「光線」の概念の「光像」への修正を意味し、構成と構図の変更は、ゲーテが批判しているニュートンの研究方法の反復となっており、それを通してニュートンの光学が拠って立つ科学的な認識の方法がはらむ問題が遂行的に告発されていることになる。しかし、図版VIIIでは、このように図像が一方的に改変されているだけではなく、図像が観者にそれを回転するように働きかけるという「像行為」も見いだされる。そして、「像行為」はニュートンの図にも見いだされることから、『光学』の図における「光線」の描写も、ゲーテの批判とは異なり、「像」とみなすことができること、このように図像は論争の対象であり手段であるだけではなく、その能動的な潜勢力によって論争の主体にもなりうることを指摘した。 図版XIIについては、まず、この図版が『光学』の実験14を再現するための装置であると同時に、ニュートンの光学にたいする風刺画でもあるという二重性をそなえていることを明らかにした。そして、ここではイメージの「見え方」に特化した光学的な視覚と、イメージの象徴的・比喩的な意味を読み解く図像学的な視覚がせめぎあっていること、また、ニュートンの光学では、書物を構成する文字という媒体も光学的な視覚の対象になっていることによって、それが光学のテクストに向けられたとき、知の空洞化を招くというアポリアをはらんでいることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲーテの『色彩論』におけるニュートン批判が、図像を対象および手段とした「図像論争」の性格をもつという仮説にもとづき、その内実を明らかにするという研究計画の下で、新たに『色彩論』の二つの図版をとりあげて、ニュートンにたいする批判のあり方を具体的に考察することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も『色彩論』と『光学』の図の比較・考察を進める。まだ考察が終わっていない図版が数点あるため、それらを中心に、これまでに入手した資料と、日本で入手可能な資料を利用して、図像の分析と考察をおこなう。 また、2020年度は新型コロナウィルスの影響で、ドイツにおいて資料の調査や収集をおこなうことができなかったことにより、前年度までに収集した資料と日本で入手できる資料を用いて研究をおこなわざるを得なかったため、2021年度に渡独が可能になった際には、追加の資料を用いて考察を補いたい。その他、17・18世紀の光学の図像の調査と収集もおこないたい。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウィルスの感染拡大により、ドイツにおいて資料の調査・収集をおこなうことができなかったため、当初予定していたより使用額が少なくなり、次年度使用額が生じた。これは、2021年度分の助成金と合わせて、渡独が可能になった場合には、旅費の一部として使用する。渡独が不可能な場合には、日本において入手可能な資料の調達やそのために必要な機器の購入などに使用する。
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Research Products
(2 results)