2021 Fiscal Year Research-status Report
Function of image in Goethe's color theory
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18K00461
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
濱中 春 法政大学, 社会学部, 教授 (00294356)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ゲーテ / ニュートン / 色彩論 / 光学 / 図像 / 色彩環 / 生理光学 / 彩色 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、まず、ゲーテの『色彩論』とニュートンの『光学』を代表する図像である色彩環の図を比較した。前者は混色の結果を算出するための極座標であり、後者はゲーテに固有の色彩の生成と調和の原理を表しているが、円環に特有の回転運動という観点に注目すると、両者の共通点と相違点が明確になった。すなわち、ゲーテの色彩環は、色彩の生成・変化を円運動として表しているが、図像そのものは静的なイメージであるのにたいして、ニュートンの色彩環は、生成や変化という要素はふくまないが、それ自体が回転する可能性をそなえた図像なのだ。そして、円盤の回転を利用した混色実験の歴史を参照項とすることによって、ニュートンの光学は、18世紀後半以降の回転混色の研究と色彩の定量的な等価性の認識を共有しているだけではなく、19世紀前半に成立した生理光学とも連続性を有するのにたいして、ゲーテの色彩論は、たしかに生理的な色彩現象を重視しているが、それはゲーテに固有の色彩観にもとづいており、19世紀以降の生理光学の先がけと単純にみなすことはできないことが明らかになった。 また、『色彩論』と『光学』の図版の明確な違いである彩色に注目した調査と考察もおこなった。具体的には、ゲーテの日記や書簡を手がかりとして、1810年代から20年代にかけて『色彩論』の図版が追加で製作された際に、その彩色がおこなわれた経緯を跡づけた。その結果、同時期にゲーテが他の学術的な図版の彩色に取り組んだ経験が、『色彩論』の図版の彩色に還元され、それらの経験を通して、ゲーテが彩色術の実践的な条件と意義を認識するようになったことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ゲーテの『色彩論』とニュートンの『光学』の図版の比較・考察をさらに進めることはできたが、2020年度以降、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、ドイツにおいて資料の調査や収集をおこなうことができていないため、図版やその下絵の細部を現物資料で確認することや、デジタル化して公開されていない資料の調査ができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、状況が許せば、ドイツにおいて資料の調査・収集をおこなって、『色彩論』や関連する図版等の現物を確認し、考察を深める。17・18世紀の光学の図像についても、まだ確認できていない資料を調査・収集したい。また、渡独の可能性にかかわらず、これまでに考察を終えていない図版について引き続き分析と考察をおこなう。
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Causes of Carryover |
2021年度も新型コロナウィルスの感染拡大により、ドイツにおいて資料の調査・収集をおこなうことができなかったため、当初予定していたより使用額が少なくなり、次年度使用額が生じた。2022年度は状況が許せば渡独したいと考えているが、2021年度の未使用額は旅費にあてるには十分ではないため、研究に必要な資料等の購入や複写に使用する。
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