2021 Fiscal Year Research-status Report
Jean-Paul Sartre et le tiers monde
Project/Area Number |
18K00462
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
澤田 直之 (澤田直) 立教大学, 文学部, 教授 (90275660)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | サルトル / 第三世界 / マグレブ / アルジェリア / フランシス・ジャンソン / レ・タン・モデルヌ |
Outline of Annual Research Achievements |
第二次世界大戦後の世界に大きな影響を与えた作家・思想家ジャン=ポール・サルトルの文学と思想、およびフランス実存主義が、1950年代から独立の機運が高まり、次第に独立を獲得していくことになる第三世界の知識人たちに大きな影響を与えたことはよく知られている。アルベール・メンミやフランツ・ファノンの著作、あるいはネグリチュードの詩のために書かれたサルトルの序文はしばしば考察の対象となってきたが、実存主義のインパクトがどのようなものであったのかについては、いまだその全貌が解明されてきたとは言いがたい。その実態を明らかにするためには、文献読解だけでは不十分であり、文献研究を実証的なアプローチと組みあせて考察することが必要である。 本研究の目的はこのような立体的なアプローチにより、フランス実存主義と第三世界の知識人との交流を跡づけるにある。 最終年度にあたる2021年度は、前年度に引き続き膨大な資料を丹念に読み込み、整理する作業を行った。とりわけ、アルジェリア戦争に焦点を当て、サルトルの発言のみならず、サルトルやボーヴォワールが実際に介入した事例などについて調査するとともに、雑誌『レ・タン・モデルヌ』の果たした役割、アルジェリア戦争への不服従を支援したジャンソン機関などについても広範囲に文献調査を行った。当初は、文献解析を実地調査で裏付けるべくフランスとアルジェリアでフィールドワークを行う予定であったが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大のために、現地調査を実施することはできなかった。そのため、重要な部分が欠落し、当初の予定を終了させることができず、残りについては2022年度に延長して調査を継続することにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していた文献収集、資料解析の作業はほぼ順調に進行している。一方、新型コロナウイルスの世界的な蔓延のため、予定していたフランスとアルジェリアでの現地調査は断念せざるをえず、いくつかの資料に関しては集めることができなかった。その結果、本研究の主軸のひとつである実証的な研究の部分は進捗が芳しくない。また、これもパンデミックの影響で、予定していた国際シンポジウムも開催することができなかった。その意味で、全体的に遅れており、延長せざるをえなかった。 また、影響関係をより多角的・重層的に捉えるために、50年代以外のサルトルの著作も確認する必要があることがあらためて確認された。 予想されていたことであるが、アルジェリア戦争に関する資料は膨大であり、サルトルが関係したものだけを取り上げても、大量の文献があるが、サルトルの弟子と見なされるフランシス・ジャンソンによる不服従の運動などについてはある程度の見通しを得ることができた。また、雑誌『レ・タン・モデルヌ』とその編集部の若い知識人たちのアルジェリア戦争への関与についても整理できた。以上に関しては、サルトルとマグレブの関わりを、とりわけアルジェリア戦争に焦点をあてた形でまとめ、「サルトルと第 三世界(2)」として発表。その他の成果としては、植民地における暴力の問題が重要な主題となっているマリ=ジョゼ・モンザン『イメージは殺すことができるか』の翻訳も共訳の形で刊行。また、サルトルの晩年の重要著作『家の馬鹿息子』に関しても、その最終巻の翻訳を分担し、刊行した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本課題は2021年度で完結する予定であったが、新型コロナウイルスの感染状況拡大の影響を受けて延長をせざるをえなくなた。2022年度は、これまでの調査をまとめる作業に入る。ただし、予想していた以上に膨大な文献があったため、ラテンアメリカ世界、カリブ海、北 アフリカ、それぞれの地域に関して、文献の解析が終わっていない部分もあり、それに関しても引き続き進めていきたい。 当初、予定していた現地調査は、新型コロナウイルスの世界的な感染状況が完全に収束していないだけでなく、ウクライナでの戦争などがあり、世界情勢が不安定なため難しい。そのため、文献調査を中心にして成果をまとめる方向で考えていきたい。ただし、国際シンポジウムなどに関しては、可能な場合には参加し、成果を発表することにしたい。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの世界的な感染状況悪化のために、前年度、今年度と予定していた調査旅行ができなかったために未使用額が生じた。これについては、本年度、学会参加や可能な範囲での海外出張調査、それができない場合は、文献収集などにあてることにしたい。
|
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Book] ノーベル文学賞のすべて2021
Author(s)
都甲 幸治 (著, 編集), 江南亜美子, 阿部公彦, 日吉信貴, 栩木伸明 , 宮下遼, 山内功一郎, 松永美穂, 澤田直, 松下隆志, 久野量一, 中村和恵, 中村隆之, 栩木玲子, 柳原孝敦, 田尻芳樹, 北田信, 岡室美奈子, 江田孝臣, 平野啓一郎, 坂本葵, 野谷文昭, 鈴木雅雄 , 三神 弘子, 斎藤 寿葉, 萩埜 亮
Total Pages
256
Publisher
立東舎
ISBN
4845636557