2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00464
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山本 浩司 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80267442)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ドイツ文学 / アヴァンギャルド / オーストリア文学 / ヤンドル / ウィーン派 / パスティオール / 実験詩 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度末のウィーンでの研究滞在で資料の収集、海外研究協力者との意見交換に大きな成果が出たのを受けて、2020年度も良いスタートを切れるかと思いきや、Covid-19ウィルス感染の急激な拡大によって、大学図書館は愚か、個人研究室へのアクセスすら大幅な制約を受けるとともに、オンライン授業対応に莫大な時間と労力を費やすこととなった。夏休みや春休みの海外渡航計画も中断を余儀なくされ、研究実施計画は大幅な修正を余儀なくされた。かろうじて口頭発表した成果を加筆訂正し学術誌に掲載することができるだけだった。 現代オーストリア文学にあってノーベル賞作家エルフリーデ・イェリネクとともに、ウィーン派の言語実験的な系譜に連なるカトリン・レッグラの戯曲作品に取り組み、接続法一式による間接話法を劇言語に投入した実験の意義をネオリベラリズム批判というテーマと関連づけて考察した日本独文学会文化ゼミナールでの研究発表原稿に大幅な加筆訂正を加えて同ゼミナール叢書にドイツ語論文として発表した。同じく女性の詩人マリオン・ポシュマンの庭園詩集を、とりわけポストジャポニズムの観点から取り上げ、ロヴィス・コリントらモダニズム風景画の実験的な手法を意識しつつ借景という東洋庭園の古典的な技法を詩に援用した詩人の試みの意義を考察し、アジア・ゲルマニスト会議記念論集にドイツ語論文として発表した。ウリポのドイツ人唯一のメンバーとして知られるオスカー・パスティオールについては、初期のロシア抑留体験詩と後期の表層翻訳詩を分析して、この実験詩人において抑留体験のトラウマが、隠れた形であれ、いかに一貫して創作の中に流れているか跡づけ、実験詩が言葉遊びに淫することなく、歴史的トラウマ体験に迫る力をいかに持ちうるかを考察した。その成果は、ドイツで刊行された論集にドイツ語論文として、また日本独文学会研究叢書に日本語論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
Covid 19 ウィルスの世界的蔓延により、2020年8月9月、2021年3月に計画していたドイツ・マルバッハ文学資料館やウィーン文学館での一次・二次資料の調査、海外の研究者の交流もままならず、研究計画は大幅に遅延していると言わざるを得ない。計画していた国内外での口頭発表もすべてキャンセルせざるを得なかった。 計画していたオーストリア・アヴァンギャルドのアンソロジー翻訳プロジェクトについても、コロナ禍での講義科目のオンライン対応やハイブリッド対応に時間と労力を割かれたため、ほとんど進捗を見ることがなかった。 そうしたなかで、かろうじて挙げることのできる研究成果としては、O・パスティオールの寄生的翻訳について日本語論文として、同じパスティオールのロシア抑留体験を記した詩について、ウィーン派の言語実験の系譜につながるカトリン・レグラの演劇テキストについて、現代詩人マリオン・ポシュマンの絵画詩について、ドイツ語で論文を発表したことである。 昨年度の計画の先延ばしにより、今年度に予算を振り分けた。
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Strategy for Future Research Activity |
授業のオンライン対応にもだいぶ慣れてきたこともあり、今年度はエフォートをかなりの程度本研究の推進に向けることが可能になると見込んでいる。翻訳プロジェクトについては夏休みを中心に重点的に進めるつもりである。資料収集や海外研究協力者との意見交換のための渡航計画の実現は今年度もなお不透明ながら、ワクチン接種が受けられるようになれば、冬から春にかけて、ウィーンとマルバッハでの二三週間の研究滞在を目指す。ただし、不測の事態によって渡航が叶わない事態も想定しなければならない。ズーム等のオンライン会議システムの活用は次善策として考えるが、ウィーンの文学館やマルバッハの文学資料館にある資料はデジタル化されておらず、現地に行かなければ、閲覧できない。国際的な交流の正常化に時間がかかるようであれば、研究計画の一年延長も視野に入れざるを得ないと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染拡大により、計画していた海外渡航が実現しなかったため。ワクチン接種が進む今年度の秋以降にウィーンとマルバッハへの渡航を実施する。
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