2018 Fiscal Year Research-status Report
18世紀末―19世紀初頭のロシアの文芸作品における「ロシア」形象の研究
Project/Area Number |
18K00470
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
鳥山 祐介 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (40466694)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ロシア文学 / 西洋史 / 文学論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度である2018年度には、主として手持ちの資料および国内の図書館や書店を通じて入手することができた資料を読み込むことで基本的な論点の整理を行い、2年目以降の研究の展開を見据えた基礎固めの作業を行った。 まず、本研究の主題である18世紀末から19世紀初頭のロシアの文芸作品におけるロシア表象の問題を扱う上での準備作業として、18世紀中葉のロモノーソフやスマローコフにおけるロシア語やロシア史をめぐる問題について改めて情報収集を行った。こうした点は、エカテリーナ二世期の文化状況、とりわけロシア文章語の確立に向けた様々な施策において教会文献の言語の諸要素がどのように継承されたかという問題や、女帝自身の作品をはじめとする多くの戯曲作品において西欧化以前のロシアの歴史的過去がどのように表象されたかといった問題を考察する上で重要な前提になると予想される。 また、18世紀後半のクニャジニーン、カプニストの著作についても情報の整理を進めた。クニャジニーンの「ノヴゴロドのワジム」は前近代のロシアにおける民主政体の存在を象徴するノヴゴロドを舞台とした作品として後のカラムジンとともに重要な地位を占めている。またカプニストは古典古代の文化遺産が同時代のロシアの現実の中でどのように再解釈されるかという点を考える上で重要な存在である。 以上のように2018年度には本研究の今後の発展につながる重要な論点をいくつか導き出すことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は諸事情により当初予定していたロシア出張を行うことができず、新たな資料の収集はできなかったが、現時点で必要な文献の多くは既に手元にあり、それ以外の文献も国内の書店から入手することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度にはこれまでに得られた成果に基づき、18世紀末から19世紀初頭のロシアの文芸作品におけるロシア表象の問題について、同時代の文学作品や諸記事を通じて考察を進める。19世紀初頭のロシアで刊行された愛国的な雑誌「祖国の子」など、日本では断片的にしか参照することのできない文献についてはロシア出張を行い、ロシア国立図書館等で閲覧、複写を行う。
|
Causes of Carryover |
勤務先の業務のために9月に海外出張をする用件が生じ、時間的余裕の関係から本研究のためのロシア(モスクワないしサンクトペテルブルク)出張をとりやめたため、大幅な次年度使用額が生じた。次年度以降、日程に余裕をもたせた出張を行うことで有意義に使用する予定である。
|