2021 Fiscal Year Research-status Report
18世紀末―19世紀初頭のロシアの文芸作品における「ロシア」形象の研究
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18K00470
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鳥山 祐介 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (40466694)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ロシア文学 / 西洋史 / 文学論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は本研究の4年目であったが、COVID-19の流行の収束の兆しが見えなかったため、前年度に続いて当初の計画に変更が生じた。当初の研究実施計画ではロシアないしフィンランドで資料収集を行い、その資料の検討を通じて研究を新たな段階に進める予定であった。しかしながら、上記の理由により計画に変更を余儀なくされたため、主として手持ちの資料やオンラインで収集可能な資料を用いて研究を行った。 2021年度にはデルジャーヴィンやカラムジンといった、比較的一次資料や関連資料が手に入りやすい文芸作品の検討に集中的に取り組んだ。また同時に、ジュコーフスキー。グリンカからプーシキン、レールモントフに至るナポレオン戦争関連の文芸作品にも目を向けることで、王朝国家の論理と歴史的記憶や空間表象の問題がどのように関係しあってロシアの形象を創り上げているかについて整理を試みた。その成果は近いうちに刊行される予定である。さらに同年度に刊行された共訳書『ナターシャの踊り』のために執筆した訳者解説は、同書の主題であるロシア文化とロシア性の問題に関する論点を整理したもので、18世紀初頭から20世紀半ばまでの広い時代を視野に入れたものではあるが、本研究とも基本的な問題意識を共有している。 もっとも、新たな資料収集ができない故の困難もあった。特に近年になって再刊行されていない文献資料(特に当時の雑誌資料など)の閲覧は困難であることが多々あり、前年度より積み残した課題もまだ残っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度もCOVID-19の流行が続いたため、当初予定していたロシアおよび周辺国への出張が再開できず、新たな資料収集ができなかったことが、新たな資料収集の機会を逃したことが、研究の進捗に影響を及ぼした。手持ちの資料とオンラインで参照な資料にそれなりに蓄積があるため、ある程度研究を進めることができたが、18世紀など古い資料にはアクセス可能なものとそうでないものがあり、当初の予定よりは遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度には海外渡航が可能になる兆しが見られるため、資料収集の再開を考えている。ただし、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻の影響で外務省から渡航中止勧告出ている(2022年4月現在)ロシアへの渡航は今年度中に再開できない可能性が高く、フィンランド、バルト諸国、チェコなどのロシアおよびスラヴ関連の文献を多く所蔵するロシア以外の図書館の訪問を考えている。また、研究機関の延長も視野に入れている。
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Causes of Carryover |
2021年度には資料収集のためロシアないしフィンランドへの出張を予定していたがCOVID-19流行によりキャンセルとなり、また前年度から延期されていた中東欧研究協議会(ICCEES)世界大会はオンライン参加となったため渡航費が不要となり、多くの未使用額が生じることになった。今年度はこれまで滞っていた海外での資料収集を再開する予定であるため、未使用額はそこに使用する。また、研究期間の延長も視野に入れつつ、計画を進めていく。
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