2022 Fiscal Year Research-status Report
18世紀末―19世紀初頭のロシアの文芸作品における「ロシア」形象の研究
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18K00470
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鳥山 祐介 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (40466694)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ロシア文学 / 西洋史 / 文学論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は本来であれば本研究の最終年度であったが、COVID-19の収束状況についての判断が難しかったことに加え、当初の研究実施計画で資料収集を行うための重要な出張先と考えていたモスクワおよびサンクトペテルブルクがロシアによるウクライナ侵攻の影響で外務省による渡航中止勧告の対象地域となったため、研究計画を新たに練り直すこととなった。研究期間を1年延長することでこの状況に対応することを決定した。 2022年度には、前年度に引き続き、一次資料や関連資料が手に入りやすい文芸作品の検討に取り組んだ。とりわけ18世紀以降、新たなロシアのイメージが表出される重要な機会となった戦争関連の詩、特に頌詩の研究に集中して取り組んだ。またその延長線上にあるとともに現代に至るロシア文化の新たなアイデンティティが生まれる契機となった対ナポレオン戦争期の文芸作品の検討にも引き続き取り組んだ。とりわけその代表的な例であるレールモントフの作品について、国内に所蔵された資料とウェブ上で閲覧可能な資料をもとに先行研究の整理、および考察を行い、一定の成果を得た。18世紀以来の戦争詩の文脈の中でレールモントフの詩作品を読解する試みを現在行っており、近代ロシア文学形成期のロシア表象を考える上での重要な論点を含む研究として、現在論文としてまとめている最中である。 一方で、近年になって再刊行されていない文献資料(特に当時の雑誌資料など)の閲覧が困難であるという、前年度より積み残した問題は依然として残っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度もCOVID-19の流行が続いたことに加え、ロシアによるウクライナ侵攻の影響もあって当初予定していたロシアおよび周辺国への出張が再開できず、新たな資料収集ができなかったことが、研究の進捗の遅れに大きく影響した。手持ちの資料、国内に所蔵されている資料、オンライン上の資料でそれなりに研究を進めることはできたが、入手できない者も多いため、当初の予定よりは遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を延長し、改めて最終年度となった2023年度には海外での資料収集の再開を考えている。ロシアへの渡航は再開できないため、フィンランドなどロシアおよびスラヴ関連の文献を多く所蔵するロシア以外の国の図書館への訪問を考えている。
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Causes of Carryover |
2022年度には資料収集のためロシアないしフィンランドへの出張を予定していたが、COVID-19の収束状況の見極めが難しかったことにウクライナ侵攻によるロシアへの渡航中止勧告が加わり、渡航を見合わせたために多くの未使用額が生じた。2023年度には研究期間延長により海外での資料収集を再開し、未使用額はそこに使用する予定である。
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