2020 Fiscal Year Research-status Report
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18K00471
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石原 あえか 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80317289)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゲーテ / 近代測地学 / オイラー / ガウス / アレクサンダー・フォン・フンボルト / 地球儀 / 地磁気 / 日独(欧)学術交流史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題採用初年度の研究成果であるゲーテと月(月面図・月面観測含む)に関するドイツ語寄稿論文がドイツ・ボン支部ゲーテ協会刊行の論文集『Jahresgaben』に掲載・公開された。続いて2019年夏のドイツにおける一次資料調査の一部成果として、1811年に現れた大彗星や同時期に確認された隕石について、特にゲーテと親交のあったクラドニに注目した日本語論文「1811年の彗星ワイン あるいはゲーテとクラドニの隕石研究」にまとめた(ゲーテ自然科学の集い『モルフォロギア』掲載・査読付)。なお、この時代の隕石は、天文学だけでなく、気象学とも関連性があることにも言及している。 同時に約2年間の本研究の中間報告を兼ねて、今井康雄先生が研究代表者の科研研究会(2020年6月)において「ゲーテ時代の天文・気象学 科学する詩人のメタモルフォーゼ」と題した研究発表をオンラインで1時間行った。教育学の専門家が中心だったため、続く質疑応答も文学研究者とは異なる視点からの指摘が多く、大変参考になった。 大学の夏季休暇に予定していたドイツでの資料収集が、COVID-19によるロックダウン継続により不可能と判断し、2020年春から、過去2年で収集した資料の整理・分析を優先し、ドイツ側文書館等とのメールやオンラインによる協力も得て、日本語の単著にまとめる作業に集中した。この結果、11月末に測地学をメインとしながらも、天文学・気象学・地理学の内容を盛り込み、また日独学術交流の視点も含めた単著『教養の近代測地学 メフィストのマントをひろげて』を上梓した。刊行後、地理学・地学分野の定期刊行物・専門誌等でも紹介されつつあり、一定の評価を得られているようである。なお、次年度は渡独の見込みがたつか否かにかかわらず、さらにゲーテ時代の天文学に絞って、本課題の総括を行いたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度はCOVID-19のロックダウンが続くドイツへの海外出張が出来ず、また研究調査を行う予定であったドイツ国内の博物館・図書館等も軒並み閉館したため、研究対象の資料に全く手が届かず、本来予定していた研究活動は不可能になった。2020年後半から、ドイツ側でデジタル資料の公開等も活発に行われるようになったが、一般向けでない資料については、やはり現地での調査が不可欠で、当初予定していた計画には大幅な遅れが出た。 他方、2020年度中のドイツ出張はかなり難しくなると判断し、2020年春までに収集したデータ・資料の整理・分析・まとめを先行させた結果、本研究の中間成果として、単著を11月末に上梓することができた。その意味では、遅れを最小限に留められたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度同様、2021年5月の時点では、ドイツでの研究調査の見込みが立っていない。もちろんドイツ語圏専門研究者たちとの情報交換および資料収集等はオンライン等を活用して、できる限り進めていくが、むしろ本研究課題で当初は考慮していなかった国内の研究施設おける調査の可能性を見直す。具体的には国立天文台、糸魚川フォッサマグナミュージアム、国土地理院及び地図と測量の科学館などを念頭に、定期的かつ網羅的な国内出張の計画を立案・実施する。可能であれば、2022年春にドイツで最終調査および研究発表を行いたいが、このまま研究活動に制限があったとしても、研究単著の形でまとめ、刊行することを目標とし、引き続き、可能な手段を駆使して本課題に取り組みたい。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染状況拡大(特にドイツにおける長期ロックダウン)により、予定していた比較的長期の海外出張旅費を使用できなかったため。2021年春に短期ドイツ出張を行う計画も念頭に置きつつ、それも不可能になった場合のために、早くから定期的に研究調査を代替できる複数国内施設での資料収集等を積極的に行う。
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Research Products
(5 results)