2018 Fiscal Year Research-status Report
フランス第三共和政における文学と都市計画──ゾラとトニー・ガルニエ
Project/Area Number |
18K00472
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
彦江 智弘 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (80401686)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | エミール・ゾラ / トニー・ガルニエ / 文学と都市計画 / ユートピア / アンリ・ルフェーヴル |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は「研究の目的」のうちゾラとガルニエとの関係および都市計画と文学の問題の整理に主に取り組んだ。 前者については、自然主義文学研究会にてゾラの『労働』とガルニエの『工業都市』の関係を素描する研究発表を行い、多くのゾラ研究者と討論の場をもった。この発表では実証的な側面の解明にも力を入れ、ガルニエが『工業都市』を構想するにあたってゾラの『労働』を実際に読んだのかどうかを現在入手可能な資料から検討した。また併せて「ユートピア」というテーマを導入した作品の読解も試みた。(「第三共和政における文学と都市計画の交点──ゾラとトニー・ガルニエのユートピア的読解の可能性」自然主義文学研究会 6月1日 慶應大学三田キャンパス 北館地下1階会議室3)。 ゾラにおける「ユートピア」というテーマについては、『引用の文学史』に寄稿した論文(〈言葉の受肉〉としての引用──ゾラとトニー・ガルニエのユートピア)においてさらに発展させた。 その一方で後者については、横浜国立大学都市イノベーション研究院の教員グループが主催する都市空間研究会で研究発表を行った。この研究会ではフランス都市社会学のキーパーソンであるアンリ・ルフェーヴルを取り上げており、主にルフェーヴルの『都市への権利』に依拠しながら、都市の問題と文学(芸術)との関係を検討した。同書でルフェーヴルは「作品としての都市」という概念を提出するのだが、これがゾラのユートピア的都市像を分析する際に有効であるのではないかということを議論した。(「ルフェーヴルへの文学からのアプローチ」都市空間研究会(横浜国立大学)第5回 1月27日 岩波ブックセンター会議室)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」に掲げた三つの課題について、研究会での発表の都合により、当初の計画を柔軟に組み替えたケースがあるが、おおむね順調に取り組んでいる。 他方、フランスでの調査については、文献調査だけでなく現存する関連建築や実際の都市の調査も行う予定であったが、先般よりフランス全土で広まっている黄色いベスト運動での混乱を考慮して当該年度は見合わせた。従ってフランスでの調査は、国立図書館(パリ)と公共情報図書館(パリ)での文献調査を中心に行った。
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Strategy for Future Research Activity |
実施計画通りゾラの『パリ』の分析を進めるとともに、当該年度に実施できなかったル・コルビュジエ関係の調査を行い、第三共和政期の文学と都市計画の関係の精査に取り組む。またフランスでの調査もこの点を踏まえて、文献調査と関連建築物の調査を併せて行う予定。
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Causes of Carryover |
おおむね研究計画通りに予算の執行を行ったが、最終的にごく少額の残額が生じた。これは次年度において本研究の支出の主な費目である物品費(図書資料)に充てる。
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[Book] 引用の文学史2019
Author(s)
篠田勝英、海老根龍介、辻川慶子
Total Pages
384
Publisher
水声社
ISBN
480100394X