2018 Fiscal Year Research-status Report
ウィーン・ラジオ放送の文学番組とオーストリア・ファシズムの文化政策
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18K00473
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
早川 文人 金沢大学, 外国語教育系, 准教授 (30724398)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ウィーン / ラジオ放送 / 放送劇 / オーストリア・ファシズム / 文化政策 / RAVAG / ハンス・ニュヒテルン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の構想は,オーストリア・ファシズム期のラジオ放送の文学番組やラジオ雑誌の分析を通じて,当該時代の文化政策とその実際的な影響の解明を目指すものである。 H30年度は,本研究課題の研究計画に基づき,これまで収集した文献の整理と読解,とくにオーストリア・ウィーンのラジオ放送局(RAVAG)の年次報告書および文学番組で取り上げられた個々の作品の読解作業を進めるとともに,オーストリア国立図書館を中心にRAVAGの文学番組に関連する文献の収集に努めた。本研究全体を推進するうえで重要な文献,とくに前研究課題を推進していく過程でも気がついた,第二次大戦前のRAVAGの文学番組を取り仕切っていた文学部門長ハンス・ニュヒテルン(1896-1962)と文化活動機関「新生活」との関連を示す文献収集にも着手できた点については,実際的な成果として挙げられよう。 これまでの研究成果の一部については,2018年11月23日「ハンス・ニュヒテルンー大戦間期ウィーンのラジオと文学を考える手がかりとして」(日本独文学会北陸支部研究発表会)において報告を行った。この発表では,第二次大戦前のRAVAGの文学番組を概観,俯瞰的に把握するために,ニュヒテルンに焦点をあて導きの糸とした。この発表とH29年度の研究発表を踏まえ,当時最先端のメディア導入の背後にある伝統的オーストリア文化称揚の意図を検証するため,ハンス・ニュヒテルンが演出した放送初回のラジオ劇『農夫と死』について,論文「ウィーン・ラジオ劇の誕生ーラヴァク黎明期とハンス・ニュヒテルン」(上智大学『ドイツ文学論集』55号)にまとめ,発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の全体構想に基づいて,予備的かつ根幹をなす,分析対象となる日本で入手困難な文献の収集作業については,事前準備を入念にしていた結果,予定していた通りの進度を保つことができた。とくにハンス・ニュヒテルンの著作の全体像を把握できた点が評価できる。今後の課題としては,未確認の作品群や未整理の書簡などの存在についての対応が求められる。 文化機関「新生活」に関する文献収集については,文学あるいは文学部門の文脈からのラジオ放送の文学番組を軸とした収集作業は,当初予想していたよりも進捗状況が思わしくなかったので,生活・文化史の文脈へとフィルターの網目を広げ,文献収集を行う現地の対象となる機関を再検討することで,より多くの対象文献を確保するという方法に軌道修正する。
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Strategy for Future Research Activity |
H31(R元年)年度も,本研究の全体構想およびスケジュールに基づいて,本研究を推進するうえで必要不可欠な資料を収集し,研究基盤を整えていく。本国では入手困難なニュヒテルン,文化機関「新生活」に関する資料の収集については,現地において集中的に行う。資料収集調査に関しては,ウィーンの放送資料館,オーストリア国立図書館等,オーストリア国内での実施を中心とする。前研究課題でも協力を得た放送資料館のスタッフおよび現地での研究者からは,本研究課題でも引き続き協力と助言を仰ぐ。さらに補足資料を収集するため,対象機関として,ドイツ放送資料館での調査も視野に入れ,事前準備を進める。なおこれらも研究成果の一部については,学会報告および学術論文において公表していく。
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Causes of Carryover |
翌年度繰り越した616円に関しては,図書の購入費の一部にあて適切に執行する。
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Research Products
(2 results)