2021 Fiscal Year Research-status Report
ウィーン・ラジオ放送の文学番組とオーストリア・ファシズムの文化政策
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18K00473
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| Research Institution | Kanazawa University |
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Principal Investigator |
早川 文人 金沢大学, 外国語教育系, 准教授 (30724398)
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| Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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| Keywords | アウストロ・ファシズム / オーストリア文学 / 文化政策 / ラジオ放送 / ウィーン / 群衆 / 群集 / 祝祭劇 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本年度の当初の計画では，「ラジオ通信株式会社」（RAVAG）の文学部門長ハンス・ニュヒテルン(1896-1962)の関連文献の調査を軸に研究を進める予定であった。新型肺炎感染拡大下にあったため，独墺での調査を中止せざるをえなかったので，昨年度に引き続き，これまで収集した当該時代の文献の整理と分析，墺国立図書館等で公開されているデジタル資料（雑誌『ラジオ・ウィーン』等）の読解と考察を研究の主軸に置いた。とくにニュヒテルンの《群集祝祭劇》（『赤・白・赤』，1936）に注目し，《群集・群衆》（Masse）も考察の対象に含めて分析の作業を進めた。この劇は職能制身分国家時代の憲法記念日を祝うために用意された祝祭劇であった。この分析と考察を進める過程で，RAVAGの番組上でニュヒテルンと関係があった墺ユダヤ系作家ヘルマン・ブロッホ（1886-1951）の手によって，ほぼ同時期に執筆された『魅了（呪縛）』（Die Verzauberung, 1935）にも注目した。整然とした集団行動が求められる群集祝祭劇とは対照的に，ブロッホは《村の祭り》で群衆がしだいに理性を失っていくさまを描いていた。群集・群衆という概念を結節点として，1930年のマスメディアを取り巻く文学状況の考察する契機を得たことが本年度の成果であり，今後の研究に広がりを与える視座を得た。これらの研究成果の一部は，ブロッホの『魅了（呪縛）』で描かれる，《迫害群衆》の暴力の対象となった代理業者ヴェチーに焦点をあてて分析した口頭発表（ヘルマン・ブロッホ『魅了』( Die Verzauberung, 1935) における代理業者像 について，2022年2月19日，日本独文学会北陸支部学会）に反映されている。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型肺炎感染拡大によりオースリア・ドイツでの現地調査が不可能となったので，昨年に引き続き，デジタル化された文献（『ラジオ・ウィーン』）やすでに収集した文献（RAVAGの年次報告書など）を主な対象としながら分析と考察を進めた。しかし研究構想の核心部分には，デジタル公開されていない未収集の文献が分析対象になっているので，研究全体の進捗状況についてはやや遅れが生じたと言わざるを得ない。
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| Strategy for Future Research Activity |
独墺図書館や公文書館で公開されているデジタル化された資料を最大限に活用して，研究全体の推進をはかる。引き続きハンス・ニュヒテルン演出のRAVAGの文学番組，ならびに彼が執筆した政治的群集祝祭劇の分析を主軸に置きつつ，1934-1938年という時代に焦点をあてることで，他の作家の文学活動にも目を向けつつ研究対象の枠組みを拡大し，政治・文学・（ラジオ）メディアに表象される当該時代の特を文化政策の観点から考察する。
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| Causes of Carryover |
新型肺炎感染拡大状況下のため，オーストリア，ドイツでの現地調査を実施できなかった。そのため本年度の研究費については，必要な文献の収集のために主に使用した。新型肺炎感染拡大により外国書籍の購入にも影響があった。これらの結果，本来計画していた執行計画に差額が生じた。
次年度の使用計画としては，オーストリアやドイツでの文献調査のための旅費と文献書籍の購入及び複写の費用，記録媒体の購入費用，謝金にあてる予定である。
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