2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00474
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
鎌田 隆行 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (30436985)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | バルザック / フランス文学 / 十九世紀小説 / 生成論 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 十九世紀フランス文学や生成批評全般に関連する版本、参考書籍、各種資料を幅広く収集・参照し、同時代におけるフランスの文学生産の状況(特に出版、ジャーナリズムの発展の様態)を検討した。他方、小説・演劇・論説等の各文学ジャンルにおける作家間あるいは作家と諸芸術のアーティストの協同的な作品制作のあり方について歴史的状況を整理した。 2. バルザック『人間喜劇』およびその他の作品に関して、本研究の観点から資料収集を進め、必要な書籍や論文を入手するとともに、フランス学士院図書館ロヴァンジュール文庫のバルザック関係の原資料(プラン、草稿、校正刷り、版本、契約書、書簡)を調査し、『人間喜劇』ほかの作品に関して保存されている共作に関連する資料群を閲覧し、保存状況を精査した上で研究ノートを作成した。 3. 最新のバルザック研究、とりわけ生成論的アプローチによる研究の進展状況を参照し、国内およびフランスの研究会やセミナーなどの場で第一線の研究者たちと意見交換を行った。特にリヨン高等師範学校のエリック・ボルダス教授、ランス大学のナタリー・プライス教授から数度にわたって本研究課題について意見をうかがうことができ、研究方針や関連資料についてアドヴァイスを得た。 4. 上記の準備作業に基づき、バルザックの文学制作における共作の通時的進展を1)共同執筆、2)オムニバス作品への寄稿、3)序文等のパラテクストの寄稿、4)反=協力的介入の問題を考慮しながら分析し、論文「バルザックにおける共作について-問題の素描の試み-」にまとめた(投稿済、2019年度中に刊行予定)。また、バルザックの作品制作メカニズムと当時のメディアの関係を広く考察した一冊の共著と一編の論文の刊行を行い、同じ問題系をめぐって三本の研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全般的な資料収集、ロヴァンジュール文庫関連の原資料の閲覧が計画通り順調に進み、バルザックにおける共作について、時代背景を考察し、個別のケースの具体的な進展について論点整理を行って論考を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
十九世紀における共作の問題の全般的状況とバルザックにおけるその展開について基礎的資料の収集と情報の整理を終えたので、今後は研究計画の完遂に向け、原資料調査によるバルザックの共作の実態とその創造性の分析を行っていく。2019年度は関連するバルザックの版本(連載小説、初版、再版)を広く参照するとともに、草稿・校正刷りなどの自筆資料の分析を進め、その中から特に重要な資料をピックアップし、ケーススタディーの分析を行う予定である。2020年度はこの作業を継続し、バルザックにおける共作の様態と個別の事象について総合的にまとめた報告の作成を進めて行く。
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