2019 Fiscal Year Research-status Report
Hybrid Genres and Synesthesia. Interaction between Modern Literature and Painting
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18K00479
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
Emde Franz 山口大学, 人文学部, 教授 (00209157)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 恵 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (00293001)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 共感覚 / 絵画と文学の相乗効果 / 翻訳論 / 文学の絵画性 / 絵画の詩学 / 表現の多様性 / 感覚描写 / 認識とアイデンティティー |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題である「絵画と文学の融合的な相互作用」という観点から、文学・言語・絵画の範疇を越える描写の痕跡を、ヴァルザーとクレーの作品を軸に多面的に分析している。 2019度中に出版された連携研究者の新本(津田塾大学)の著書『微笑む言葉、舞い落ちる散文』(2020年)は、ヴァルザー文学について横断的に論じ、これまで積み上げてきた研究や翻訳活動も生かしながら、ヴァルザー文学の特色や近代における意義を明らかにしており、本プロジェクトの根幹ともなるべき研究成果である。 研究協力者の柿沼(パウル・クレー・センター, Zentrum Paul Klee/ZPK)はクレー絵画の手法を分析することでその深層まで追求し、作品解釈の新たな次元を広げている。クレーの絵画におけるタイトルや素材などの作用について、最新のクレー研究に基づいた分析を行って、彼のいわゆる「子供っぽさ」に政治的な側面が含まれていることを明らかにしている。 分担者の若林(東京学芸大学)はヴァルザーの絵画をめぐる小品集を翻訳し、絵画の歴史や技法なども視野に入れながらヴァルザーの絵画にも磨いた語り法を深層まで把握し、日本語に再現する試みを行っている。 エムデ(山口大学)は「Synaesthetic narration: Robert Walser’s experiments with language」という題目で、ヴァルザー文学の共感覚的な語りの手法について、上記のプロジェクトメンバーの研究を取り入れつつ、さらに具体的に証明する試みを行っている。まだ口頭発表の段階ではあるが、学会で紹介しながら論文に書き下ろしていく。 本プロジェクトは社会還元も目指しており、文学祭への参加を企画し、公開シンポジウムの開催、市民宛の公開講座に文学や社会における講演を積極的に行い、また書評などの執筆によって社会貢献する活動を図っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに本研究プロジェクトのテーマ「ジャンルの混交と共感覚 - 20世紀モデルネの文学・絵画の新たな受容」に沿って考察を進めており、次第に作品の本質に迫っていくプロセスが見えてきている。プロジェクトメンバーの論文や研究発表、著書などの研究活動の蓄積が形になり、順調に進んでいるといえる。2019年6月9日、津田塾大学にて研究プロジェクト打合せを行った。参加者は研究協力者の柿沼(Z. Paul Klee)、研究分担者の若林(東京学芸大学)、連携研究者の新本(津田塾大学)、研究協力者の松鵜(武蔵大学)4名であった。打ち合わせでは、2019年度夏以降の計画を調整した。 エムデはマカオ(中国)で行われたICLA大会(国際比較文学大会)で「ヴァルザーと共感覚」を題しで研究発表した。さらにベルリンでIVGパレルモ大会に関して研究打ち合わせを行った。 他のメンバーはは8月からLooren翻訳施設(スイス)に集まり、ヴァルザー作品の翻訳に取り組んだ。その間、若林と新本はBiel市で行われたヴァルザー記念イベント<Robert Walser-Sculpture> に招聘され、講演を行った。ローベルト・ヴァルザー・センター(ベルン、スイス)では、2018年に刊行されたヴァルザー=クレー詩画集(柿沼編、若林・松鵜翻訳)の朗読会が開催され、詩画集紹介やドイツ語と日本語による朗読を行なった。センター長のゾルク氏と今後の共同事業について会談した。 8月26日にLooren翻訳施設で研究発表会を行った。柿沼はクレーの絵画作品のネーミングを取り上げ、その詩的・歴史的・政治的背景を掘り下げた。若林、松鵜や新本の三名は取り組んでいるヴァルザー翻訳と関連の研究について報告した。エムデはマカオでおこなった英語による研究発表の内容をドイツ語で紹介し、研究テーマである共感覚や絵画・文学の相乗効果などについて議論を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
スイスのベルン市やビール市で交流を行ったヴァルザー専門家と、2020/2021年度の共同活動の計画を調整し、「ベルン文学祭」での講演会などの企画を立てた。これに関して2020年3月23日にオンラインによる遠隔打合せを行った。 次期の日本独文学会研究発表会の折に研究発表会ないし研究打ち合わせを実施する予定であったが、新型コロナウイルスの影響により延期となり、エムデが研究発表をおこなう予定であったIVGパレルモ大会も一年延期になった。エムデ所属のワーキンググループのプログラムは一年後に予定通り実施すると連絡があったので、研究発表を行う予定である。 2020年8月予定の「ベルン文学祭」の状況は調整中だが、日本からの参加は困難であるため、2021年度に日本でヴァルザー研究者・専門家ペーター・ウッツ教授、ヴァルザー・センター長レート・ゾルク氏を講演会に迎える計画を立て、講師らと交渉中である。 6月6/7日の独文学会が中止になったため、予定していた本科研研究会の代わりにオンラインによる遠隔科研研究会ないし研究打ち合わせを行う予定である。11月・12月に山口大学で予定している科研研究会については6月以降に具体的な日程や内容を組むこととする。 2021年度の計画:2021年度4月に独文学会シンポジウムに申し込み、2021年10月に独文学会でのシンポジウムを実施する予定。時間を180分に設定、パネラーを5人プラス司会で構成する。発表者候補はエムデ、新本,、若林、柿沼、ゾルク、葛西で、使用言語はドイツ語とする。総合テーマ(仮)は「ヴァルザーとクレー:共感覚の観点から」。発表内容はそれぞれ2020年夏までに決定し、秋の山口大学での研究会でさらに詰める。 予算の運営について山口大学の研究推進室と交渉し、2020年度の予算を2021年に生かす方針である。
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Causes of Carryover |
2019年度の計画を予定より順調に実施できたので、2020年度の国際的な場での研究発表(IVGパレルモ)とスイスの首都ベルンで行われる「ベルン文学祭」での活躍のために活用する予定であった。 しかし、新型コロナウイルスの影響で、計画は中止また延期になり2020年度の活動を論文執筆や遠隔研究会に集中させ、2021年度に国内のシンポジウムやIVGでの研究発表に向かって準備を進める方針である。予算は海外からの講師を招待し旅費や滞在費に充てるつもりである。IVG参加にも旅費や滞在費の最小限に見積もって利用する予定である。 2021年10月に独文学会シンポジウムの準備や実施に設備費や旅費などを見積もって予算を利用する予定である。
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Research Products
(22 results)