2019 Fiscal Year Research-status Report
林忠正関連資料の再発掘による19世紀末~20世紀初頭の日仏関係史の再考察
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18K00488
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
高頭 麻子 日本女子大学, 文学部, 教授 (60287795)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ジャポニスム / 林忠正 / 19世紀日仏交流 / 1900年パリ万博 / 明治の殖産・美術政策 / 浮世絵・春画 |
Outline of Annual Research Achievements |
林忠正は、これまで主に美術史分野で研究されてきた。本研究は、より広い世界史の中に林の活動を置き直し、19世紀末から20世紀初めまでの日仏関係を考察するため、50年にわたり林の研究を続けてきた木々康子氏の収集した膨大な史資料と、林本人が遺した1次史料を整理・データ化するものである。今年度は、大学院生の協力の下、林が残した手書き史料のデータ入力化と現代語訳を進めた。また、木々康子氏の活字になっていない研究内容や林忠正関連年表の最新版のデータ入力も進めた。 また、本研究を本にまとめ、多数の写真掲載を可能にするため、鹿島美術財団の出版助成に応募し、『林忠正の軌跡』(仮タイトル)を藤原書店から刊行する計画書を作成した結果、137万円の助成を受けられることになった。 近年、「ジャポニスム」が日本国内で安易に「日本はすごい」というキャンペーンに使われることが増えているが、西欧の人々にとって「日本的なもの」は、自分たちの夢や理想、改革目標などを託す、多分に誤解を含んだ「幻想」である。前述のように本研究は、日本の文化・芸術を広い視野をもって世界史の中で見直すものであり、その観点から、次の2点の発表をした。①「日本の心を世界に伝えた偉人3、林忠正:日本人が意識していない美術とその歴史の価値を世界に伝える」、『SMBCマネジメント』2020年2月号、日経BP社。②「シンポジウム:文学とグローバリズムの隙間」(平野啓一郎、阿部賢一、坂井セシル、高頭麻子)『日本フランス語フランス文学会関東支部論集』第28号、2019年12月。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
木々康子氏の健康状態がよくないため、2次資料の整理や、木々氏が活字にしていない研究成果や推論の聞き取り・録音などが進まなかった。 また、研究代表者も体調がすぐれず、海外に資料調査に出かけることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
科研の最終年度なので、①林忠正関連史資料の整理、②木々康子氏の研究成果の総まとめ、③研究代表者の新たな考察をまとめて、藤原書店より一冊の本として刊行する予定である。 ①については、引き続き、大学院生の協力を得て、林家に遺る古文書の翻刻・データ入力、漢文古文の現代語訳、フランス語原文の和訳を行う。また、国立西洋美術館に保管されている林忠正宛書簡のうち、既刊の『林忠正宛書簡・資料集』(信山社)に未収録のものをデータ入力し、和訳する。 ②については、木々氏のこれまでの研究成果を最新のかたちでまとめる。 ③については、引き続き、明治日本、19世紀末フランスについての研究を進め、林忠正の活動やジャポニスムを広い視野から見直す論考をまとめる。
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Causes of Carryover |
鹿島美術財団から助成金137万円を受けて2020年度に藤原書店から本を出版することになった。この本に写真を多数掲載するためには、鹿島の助成金だけでは足りないため、なるべく多くの科研費を残したいと考え、2019年度は高額の図書を個人研究費などでまかない、科研費の支出を抑えた。
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