2020 Fiscal Year Research-status Report
林忠正関連資料の再発掘による19世紀末~20世紀初頭の日仏関係史の再考察
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18K00488
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
高頭 麻子 日本女子大学, 文学部, 研究員 (60287795)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジャポニスム / 林忠正 / 1900年パリ万国博 / 19世紀末芸術 / 明治の殖産・美術政策 / 浮世絵・春画 / ポスター |
Outline of Annual Research Achievements |
林忠正は主に美術史分野で研究されてきたが、本研究は、より広い世界史の中に林の活動を置き直し、19世紀末~20世紀初頭の日仏の関係、それぞれの文化社会状況を考察するものである。 林の研究を長年続けてきた木々康子氏の収集した膨大な史資料と、林本人が遺した1次史料を整理・データ化することが第一のミッションである。昨年度に続き大学院生の協力の下、林が残した手書き史料のデータ入力化と現代語訳を進めた。また、国立西洋美術館に保管されている林忠正宛書簡のうち、既刊の原文林忠正宛書簡集にも翻訳『林忠正宛書簡・資料集』にも未収録のものをコピーし、フランス人研究者にデータ化してもらい、日本人研究者に手分けして和訳していただいている。 より広い視点からの考察としては、新型コロナウィルス禍で渡仏できないため、フランス国立図書館のオンラインサービス“Gallica”で可能な限り、関係資料を読んだ。その一部を論文「ブリュッセルの”肉体の悪魔“について――ベルエポックのもう一つのキャバレー」にまとめ、総合社会科学会学会誌『総合社会科学』第4集3号(査読付き)に掲載した。 今年度に高岡市博物館が入手した西園寺公望から林宛の書簡(1898年11月6日付)を見せていただき、長年の公私にわたる交流と信頼関係がますます篤くなっていることを確認(7月4日のこの博物館訪問と研究代表者インタビューは富山テレビのニュースで放送)した。 また、国立近代美術館付属工芸館の金沢移転に伴い、林の着想で作らせシカゴ万博展示の後、長らくドイツに置かれた後に日本にもどされ、林の出身地に近い北陸に帰った「12の鷹」の一部(3羽)を10月30日に見せていただき、林の日本美術への熱意と、作品の数奇な運命に改めて感慨を深めた(工芸館訪問と研究代表者インタビューは、北國新聞・北國ケーブルテレビ・NHK北陸曲『いしかわの壺』に報道された)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス禍のため、海外に資料を調べにいくことができなかった。また、国立西洋美術館も休館や事業計画変更のため、保管されている未公表の林忠正宛書簡のコピーの外部委託も遅れたため、筆者が休館明けに資料室でコピーしたが、コピーの質が悪く、大幅に予定が狂ってしまった。 本研究の成果をまとめる本の出版も年度内にはできず、1年間研究を延長していただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
延長していただいた科研の最終年度なので、海外渡航の可否にかかわらず、①林忠正関連史資料の整理、②木々康子氏の研究成果の総まとめ、③研究代表者の新たな考察をまとめて、遅れている本(藤原書店刊)を完成する予定である。 ①については、院生や協力者による草稿はほぼ揃っているので、研究代表者が疑問点に答えを与え、統一性をはかって最終稿にまとめる。 ②については、木々氏のこれまでの研究成果を最新のかたちでまとめる。 ③については、引き続き、明治日本、19世紀末フランスについての研究を進め、林忠正の活動やジャポニスムを広い視野から見直す論考をまとめる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、海外に調査に行くこともできず、鹿島美術財団から出版助成137万円を受けて2020年度に出版予定だった本も完成できなかったため、研究を延長した2021年度になるべく多くの科研費を残したいと考え、2020年度の支出を抑えた。
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