2022 Fiscal Year Annual Research Report
Reconsideration of the History of Franco-Japanese Relations from the End of 19th to the Beginning of 20th through the Re-Examination of the Documents Relating to Tadamasa HAYASHI
Project/Area Number |
18K00488
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
高頭 麻子 日本女子大学, 文学部, 研究員 (60287795)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジャポニスム / 林忠正 / 19世紀末の日仏関係 / パリ万博 / 浮世絵の流出 / 明治の美術政策 / ポスターの歴史 / フェノロサ |
Outline of Annual Research Achievements |
林忠正(1853-1906)の研究者、木々康子氏と協力して、林家に残る一次史料、日仏の同時代以降の資料のデジタル化、写真撮影・分類整理を通して、先行研究では部分的にしか研究されなかった林の全活動を、19世紀末パリおよび欧米各国の歴史・文化状況、また明治日本の歴史・文化状況に位置づけ直し、全体像を描出した。 2022年11月開催のエドモン・ド・ゴンクール生誕200周年記念シンポジウムでは、ゴンクールと林忠正の関係が単なる美術商と客以上のものであること、とりわけ、ゴンクールの著作『歌麿』、『北斎』では全面的な協力をすることにより、今日の両浮世絵師の国際的な評価を生み出したことを口頭発表し、報告書にも掲載した。 林が19世紀末パリで果たした日本文化・美術の紹介、欧米各国の美術館での鑑定・解説および西欧の文学美術関係者との交流について、また明治日本における日本美術の国際的再評価・科学的研究・保存・パリ万博等への展示・西洋の美術観を取入れた新展開のための貢献について、700頁余の著作にまとめた。 同書「第Ⅰ部 史資料を通して見る林忠正の生涯(木々康子著・高頭麻子注記)」、「第Ⅱ部 林忠正を読み直す(高頭麻子著)」の書き起こし論考では、林の美術商のみでない広い教養、欧米の文学美術関係者との交流、印象派のみならず、さらに新しい美術も理解・愛好したこと、また、将来の日本美術の発展のために、閉鎖的な旧い日本美術の保守ではなく、国際的な評価や科学的な研究、グローバルな新美術観の展開を説いたことなどを論じた。また当時流行したポスターの美術史および歴史表象としての研究の可能性についても考察した。同書では、未収録の林宛書簡150通の和訳・解説のほか、今後の研究に寄与するため、写真資料(カラー口絵と白黒口絵)・主題別参考文献一覧、3種類の年表、林の執筆稿の現代語訳・和訳など基本的な資料を掲載した。
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