2020 Fiscal Year Research-status Report
マルセル・プルーストと大衆化の力学:小説の生成過程と受容過程をめぐる表象史研究
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18K00490
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
坂本 浩也 立教大学, 文学部, 教授 (50533436)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小黒 昌文 駒澤大学, 総合教育研究部, 教授 (50438199)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フランス文学 / プルースト / 失われた時を求めて / 大衆文化 / 視覚文化 / 大衆小説 / 大衆化 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目は、予定では海外から気鋭の研究者を招聘してシンポジウムを開催する計画だったが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、延期せざるをえなくなった。そこで補助事業期間の延長承認を申請する前提で、この1年間は、研究発表や公開討論・研究会の実施を控えることを選択した。これまでは頻繁におこなってきた対面での意見交換が困難になったため、オンライン会議で可能なかぎり情報を共有しあい、各自がすでに収集済みの文献を中心に分析作業を継続し、次年度のシンポジウムにおける研究発表の準備を進めた。 坂本は、プルーストの小説と同時代の探偵小説の接点を確定するために、まず先行研究の批判的検討にもとづいて、大衆文学と比較する複数のアプローチの可能性と限界を整理した。そのうえで、探偵小説の歴史の形成に貢献した複数の作家(エドガー・アラン・ポー、コナン・ドイル、ロバート・ルイス・スティーヴンソンなど)について、プルーストがどのように受容し、どのような文脈で言及しているのか、書簡と小説作品を調査し、分析した。 小黒は、プルーストの小説と同時代の視覚文化、とりわけ世紀転換期に黄金期を迎えた広告ポスターとの関係を再考察するために、美術史や文化社会史の領域における先行研究を検討して時代背景の整理把握を行なった。そのうえで、ポスターの可能性に関心を寄せた当時の批評的言説(ロジェ・マルクス、ギュスターヴ・カーン、エミール・ストロースなど)とプルーストとの距離を確認し、小説作品に書き込まれたポスターに関する記述の読解をすすめた。 以上のように、研究発表のための準備を進めるかたわら、それぞれ最新のプルースト研究の動向を把握し、書評を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当初の計画を大幅に変更せざるをえなくなった。参加・協賛を予定していた国際シンポジウムが延期を余儀なくされたため、本年度に予定していた活動は原則的に先送りすることにした。それぞれが資料の分析を可能な範囲で継続しながら、研究代表者と研究分担者はオンラインで情報共有したが、講師を招いての研究会開催は日程調整が困難のため、次年度の検討課題とした。
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Strategy for Future Research Activity |
期間延長を申請した4年目は、当初3年目に開催する予定だった国際シンポジウム「芸術照応の魅惑4 プルースト 文学と諸芸術」(2021年5月オンライン開催予定)での研究発表をはじめとして、それぞれ業績発表の準備と、論文執筆を進める。年度内にフランスから研究者を招聘して別の研究会を開催することが困難な場合は、オンライン研究会の開催を検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、フランスから研究者を招聘できなくなったため。開催予定だった国際シンポジウムそのものは延期され、オンライン開催となった。社会状況を注視しながら、研究会などを開催する可能性を探るが、それが困難な場合は、さらに資料収集を充実させるために使用する予定である。
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