2019 Fiscal Year Research-status Report
ダダの詩学に関する研究―ラウール・ハウスマンにおける映像論と身体論を中心に
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18K00491
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
小松原 由理 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (70521904)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ダダイズム / 男性性 / モード論 / マグヌス・ヒルシュフェルト |
Outline of Annual Research Achievements |
・2018年度に続き、2019年度もベルリンで調査を行うことができた。①ラウール・ハウスマン研究者エレーヌ・ティラール氏と会合を行い、特にティラール氏が今後出版を計画している『ヒュレ1』(ベルリン州立ギャラリーアーカイヴ保管)の翻訳について情報を得ることができた。日本でのシンポジウム開催への協力についても具体的な意見交換を行った。②マグヌス・ヒルシュフェルト性科学協会のアーカイヴを訪問した。協会設立の貢献者であるマンフレート・ヘルツァー氏とラルフ・ドーゼ氏に、直接インタヴューを行った。当時の先端的な性科学の知見に、ダダイストたちの詩学がどのような影響を受けたか、またヒルシュフェルトを含め、自然科学の領域と前衛芸術の領域がいかに緊密な関係を築いていたかを再認識させられた。③ベルリン歴史博物館での『民主主義1919展』を訪問した。会場では「新しい女性」像とその変化といった、社会メディア的、ジェンダー表象的アプローチが強調されており、とりわけヒルシュフェルトに代表される性科学の動きなどが詳細に取り上げられていたことが印象的であった。前述のように、ダダの詩学を同時代的な動きの中で再度検証しなおすことの重要性を痛感させられる展覧会であった。 ・ベルリンでの調査を経て入手できたいくつかの資料をもとに、以下の論考を執筆した。①ダダの詩学としてのパフォーマティヴィティーに関する論考をまとめ、神奈川大学人文学研究所の叢書である『男性性を可視化する』(青弓社、熊谷謙介編、2020年2月)にハウスマンのダダにおけるモード論についての考察を寄稿した。②2018年度末に行った国際シンポジウムの発表原稿に加筆した論考を日本独文学会誌へ投稿した(刊行時期は2020年度とされている)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際的な研究交流をより具体的に計画できたこと、また新たな知見を手に入れることができたことなど、初年度に引き続き、研究への視点を広げるという意味で、大きな収穫があった。研究成果としてすでに2本の論考を執筆できたことも有意義な点としてあげたい。 一方、年度後半にかけては、勤務校の異動が決定したために、本研究に時間をさくことが難しく、文献リサーチなどがおろそかになった点も否めない。最終年度に向け、新たな研究環境の整備が急務となっているが、新型コロナウィルスによる構内立ち入り禁止などの措置がなされたことを受け難しい状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスによる渡航禁止などの影響もあり、計画中の国際シンポジウムに向けたやり取りは中断しており、2020年度に開催されることは現実的に難しく、別の研究成果の手法を考案する必要が出てきている。 研究期間の延長等を模索する必要も含め、検討したい。
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Causes of Carryover |
研究初年度に新たに発展的に計画された最終年度開催予定の国際シンポジウムへの招聘等予算のため。
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Research Products
(1 results)