2020 Fiscal Year Research-status Report
Research on Women and Exile in German literature from 1933 to1945
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18K00492
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Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
田丸 理砂 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 教授 (40386925)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ドイツ文学 / ワイマール共和国時代 / 女性作家 / 亡命 / アメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の達成のためには海外での文献調査が不可欠であったが、2020年度は全世界的なパンデミックにより、当初の研究計画からは大きく変更することを余儀なくされた。 2020年度は当初ワイマール共和国時代およびナチ時代にドイツ国内外で活躍していた作家マリア・ライトナーの亡命時代の作品を取り上げることを予定していた。ライトナーはドイツでは近年研究が進んでいるものの、日本ではあまり知られていない。これを踏まえ課題の重点をワイマール共和国時代のライトナーの作品に移し、書籍として刊行されている資料を中心にライトナー作品の分析を進めた。 第一次世界大戦後のヨーロッパではマスメディアの発達に伴い、新しい文学ジャンル「ルポルタージュ」作品が数多く執筆されている。なかでもライトナーの『女ひとり世界を旅する』は、潜入取材を行い、アメリカで労働者の生活を描いているという点で画期的な作品と言える。そこでライトナーのルポルタージュ作品『女ひとり世界を旅する』(1932)およびその取材を基に書かれた小説『ホテル・アメリカ』(1930)におけるライトナーのアメリカ像を考察し、勤務先の紀要『国際交流研究』に研究ノート「マリア・ライトナーが描いたアメリカ――マリア・ライトナー著『女ひとり世界を旅する』『ホテル・アメリカ』について」を発表した。本研究はライトナーが合衆国に亡命を希望しながらも、拒絶され続けられた理由を考える上でも重要といえよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究が「やや遅れている理由」としてはいくつかの要因があるが、主要なものは以下の2点である。 まず第一にはコロナ禍により本務校での授業や運営にかかわる通常業務が増加し、恒常的に本研究のために時間を確保できなかったことが挙げられる。 二つ目の理由は、コロナ禍により日本から海外への渡航が事実上ほぼ不可能となり、予定していた文献調査が実施できなかったことである。2019年度末にもドイツへの渡航を予定しており、すでに文献調査先の図書館に資料閲覧の手続きを進めていたが、感染症の急速な拡大により、急遽出張を取り止め、それ以降は現地での文献調査は行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
現在もなおコロナ禍は続いており、海外渡航が難しい以上、見通しを立てることは難しいが、仮にドイツで文献調査が実施可能な場合と実施困難な場合に分けて以下に計画を示す。 【ドイツでの文献調査実施可能な場合】昨年からストップしている現地での資料調査を行い、それを読み込み、論考を執筆したい。ただし現時点で今夏はかなり難しいことが予想されるので、来春にのみドイツに渡航する場合には、本課題の終了時期が迫っていることから、夏には今後扱う予定であった作家についての文献に当たり論考にまとめるなどし、来春の調査の成果の公表は2022年度以降となることが予想される。 【ドイツでの調査が実施困難な場合】亡命期に作品を発表している作家、例えばVicki Baum、Hermynia Zur Muehlen、Gabriele Tergitの作品は近年ドイツ語圏で出版が相次いでいる。そこでこれらの作家のワイマール共和国時代および亡命時代の作品について現在刊行中の書籍を利用し分析したい。これらを論考としてまとめることにより、本課題「1933~1945年のドイツ語圏女性亡命文学研究」を少しでも進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初、予算のほとんどを渡航費として計上していたが、新型コロナウィルス感染症の流行により、海外渡航ができなかったので、次年度使用額が生ずることとなった。2021年度は状況が大きく変わらない場合には、国内や郵送で手に入る資料を基に本課題の研究調査を前進させたい。
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