2019 Fiscal Year Research-status Report
Study on the relationship between cinema and censorship in France under the occupation of the Nazi
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18K00494
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
永田 道弘 愛知大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (50513743)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | フランス映画 / ナチ占領下 / 検閲 / 翻案 / 解放後の映画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の実施計画は3段階に分けられる。(1)フランス本国での検閲資料の収集・分析、(2)占領期の文芸映画における映画検閲の影響の分析、(3)(2)の結果をもとに、表現規制がもたらす新しい映画表現の可能性の考察。2019年6月に実施したフランスでの調査を踏まえ、実施計画の第2段階に着手した。具体的にはバルザックの小説を原作とし、ジロドゥーがシナリオを担当した『ランジェ侯爵夫人』(1941)にみられる映画検閲の影響について考察した。この映画作品はすでに以前の論考で取り上げたことがあるが、今回は検閲資料と照らし合わせながら再度分析を行った。結論として、ヴィシー政権の保守的イデオロギーに迎合した結果、感傷的なメロドラマに堕してしまっている点を再確認した。この研究成果は、2020年3月に名古屋大学で開催される予定であった国際研究集会『ドイツ占領下フランスに おける文芸・演劇・映画:ジャン・ジロドゥとその時代』にて発表予定であったが、残念ながらコロナウイルスの影響で国際研究集会そのものが中止となってしまった。ただ、2020年度中に出版予定の同国際研究集会のアクトにおいて今度の研究成果を発表する予定である。 今回のフランスでの研究調査では、検閲資料以外にもシネマテーク付属図書館が所蔵する映画『海の沈黙』の撮影台本の調査も行った。ヴェルコールの同名の小説を原作とする本映画は、公開が1947年と戦後になるため本研究かの直接の対象とはならない。しかし、解放後の映画検閲はヴィシー時代以上に厳しいものがあり、解放後の文芸映画の分析は、表現規制と映画の関係性をテーマとする本研究の推進にとって有益であるとともに、将来の研究の広がりをもたらしてくれるものと考える。『海の沈黙』の撮影台本の分析をもとに、2019年12月7日に名城大学で開催された日本フランス語フランス文学会中部支部大会にて発表を行った)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り実施計画の第2段階に着手した。その成果として、2019年6月に実施したフランス国立図書館およびシネマテーク付属図書館での調査・分析をもとに、日本フランス語フランス文学会中部支部大会にて発表を行った(「メルヴィルによる『海の沈黙』をめぐって」)。2020年3月の国際研究集会『ドイツ占領下フランスに おける文芸・演劇・映画:ジャン・ジロドゥとその時代』においても「Adaptations littéraires au cinéma et censure sous l’Occupation」の題で発表する(フランス語)予定であったが研究集会そのものが中止となったが、研究成果は当研究集会のアクト上にて発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度中に、2019年12月に行ったメルヴィルによる『海の沈黙』の撮影台本に関する発表をもとに論文を執筆し、中部支部研究報告集にて発表する予定である。 また、可能であるならば、フランス国立中央文書館にてドイツおよびCOIC(映画産業組織委員会)関連の資料の調査を行いたい。 さらに研究の実施計画の第2段階の続きとして、『家の中の見知らぬ者たち』(1942)を中心としたシムノンの小説を原作とする映画作品を分析し、秋の日本フランス語フランス文学会で発表予定である。 そして本研究の総括として、表現規制と新しい映画表現の可能性について何かしらの結論を出したいと考えている。
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Causes of Carryover |
3月に早稲田大学教授福島勲氏を招へいして、「戦争と映画」のテーマで講演会および研究会を開催予定であったが、コロナウイルスの影響で開催できなかったため、次年度に延期した。
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