2018 Fiscal Year Research-status Report
『仏文上海日報』(1927-1945)を巡る日・仏・中の文化交流
Project/Area Number |
18K00498
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
趙 怡 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 研究員 (10746481)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | Le Journal de Shanghai / 上海フランス租界 / 関西日仏学館 / グロボワ(Ch.Grosbois, 高博愛) / 徐仲年 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は上海租界で発行された『仏文上海日報』(Le Journal de Shanghai, 1927-1945) を巡る日・中・仏の文化交流を明らかにすることを目的にする。平成30年度において達成した研究実績は主に以下である。 ①すでに入手した資料をもとに、新聞の日曜特集に掲載された日中両国の文学、芸術(美術、音楽、演劇、映画)、社会風俗と歴史に関する記事を精査し、初歩的なデータ一覧を作成した。 ②京都にある旧関西日仏学館の歴史を調査している京都大学立木康介研究班と交流し、情報交換を行った。それを通して戦後上海から日本にわたり、館長になったグロボワ(Ch.Grosbois、中国語名は「高博愛」)氏に関する情報を多く得た。また8月は上海、2月末から3月初めまでは上海と武漢への現地調査も行った。上海档案館と上海図書館での調査を通して、これまで殆ど知られていない『仏文上海日報』の後続紙の詳細を掴めた。新聞の重要関係者だったグロボワと徐仲年らに関する一次資料を多く発見し、徐の子息との面会も実現した。また初めて武漢への現地調査も行い、現地の研究者の案内よって武漢の旧租界地を訪問した。武漢租界に関する記事をこれまでフランス語新聞に多く見たが、武漢租界は上海租界と深く関わっていたことを実感し、今後両者の関係についての研究も視野に入れたい。 ③一年間の間に多くの研究会とシンポジウムに参加し、研究報告も計3回行った。とりわけ上海で開かれたフランス租界史研究の国際シンポジウムに招かれ、長らく埋もれたグロボワの活動に関する基調講演を行ったことは、現地の大手ネット新聞にも翌日に取り上げられ、大きな注目を浴びた。これらの活動を通して、日中両国の研究者と頻繁に情報交換を行い、より一層交流を深めることもできた。 なお研究発表に基づいた学術論文を4点に纏めており、2019年度公開する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
中国のフランス租界史研究者に、現在中国の図書館に進められているデータベースの検索機能を教えてもらい、遥かに予想以上の情報を多く得た。そしてヒットした情報をもとに、上海図書館と档案館に埋もれている多くの一次資料を入手し、これまでほとんお知られていないグロボワと徐仲年らに関する一次資料を多く発見した。また上海の研究者の紹介によって、徐の子息との面会も実現し、貴重な話を多く聞き、後に徐仲年の人生と作品に関する詳細な資料も数多く送られた。 一方、日本上海史研究会主催の「戦後上海の「体験」――人びとの模索・移動・記憶」プロジェクトに参加し、グロボワの戦後について調べた結果、『仏文上海日報』の三種類の後続紙(誌)を発見したことは予想外の収穫である。 さらに京都大学立木康介研究班との交流を通して、グロボワと関西日仏学館との関わりが一層明らかになり、フランスでの資料所在の情報も多く得た。今後はさらなる共同研究を進める予定である。 これらの研究調査の結果として、すでに学術論文を4点執筆した。出版事情によって刊行が遅れたものもあるものの、2019年度に公刊される予定である。 また2月に予定していたフランスへの現地調査を公私的な理由によって実現できなかったものの、その代わり、これまで多く入手した資料を整理することができ、2019年夏に延期されるフランスへの現地調査がより実りの多いものになることを確信している。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度により代表者が関西学院大学経済学部教授として着任し、研究条件がはるかに向上した。勤務校には20世紀前半のフランスと世界で名を馳せた有名なフランス文芸誌を多数所蔵しており、そこに徐仲年による翻訳と記事が多く掲載されたことを発見した。それを早速論文に纏め、5月11-12日に東京大学にて行われる国際シンポジウムに提出し、口頭報告も行う予定である。 夏にはフランスと上海への現地調査を行う予定であり、それによって、より多くの情報を入手し、現地の研究者との交流も一層深めることが予想される。 また代表者との交流を通して、日本のフランス関係の研究者による上海フランス租界への関心も高まっており、今後さらなる合作、または共同研究が期待される。
|
Causes of Carryover |
2019年2月に計画していたフランスへの現地調査が、公私的な理由により中止されたため、残額が生じた。同年夏に現地調査を実現し、当助成金を全額使用する予定である。
|