2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K00499
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
谷口 幸代 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (50326162)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多和田葉子 / トポス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日独バイリンガル作家・多和田葉子の文学における複数文化的なトポスの諸相を明らかにすることを目的としている。 研究期間の2年目にあたる2019年度は、まず前年度からの継続作業として、多和田文学におけるトポスの展開を調査・整理する作業に従事し、前年度に収集したデータを更新した。この調査過程で得られた成果をもとに、作品発表、演劇化の動向、朗読、講演、パフォーマンス等の多和田の活動をめぐる事蹟を年次ごとにまとめた年譜や著書目録を作成した。 次に、前年度に調査を開始した『百年の散歩』の舞台について、実地踏査と文献調査を試みた。それをもとに作品解読に進み、本作の舞台となる、ベルリンに実在する十の街路の名称とそこに刻まれた歴史性について考察するとともに、世界都市ベルリンの現代の遊歩者としての「わたし」の眼に映る現在の風景との関わりについて考察した。 さらに、日本神話を下敷きにしたトポスに関する作品の解析に入った。取り上げた作品は戯曲Orpheus oder Izanagi、小説『献灯使』、同じく小説の『地球にちりばめられて』である。これらジャンルを横断する形で、日本の神話を下敷きにしたトポスに関する作品の系譜が多和田文学の中にあることに着目した。『地球にちりばめられて』で『古事記』の国生神話に由来するHirukoが突然登場したのではなく、必然的な展開があったと考え、それらの作品で故国を離れて流される存在が描かれる意味を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の調査・考察をもとに計画通り研究を進め、ベルリンでの実地調査も行うことができた。また国際論集に投稿し、成果を発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、多和田の戯曲を中心に研究を進めるとともに、学会シンポジウムに登壇し、多和田文学の越境的な視線と複眼的な思考に関して、多和田文学研究者のみならず,広くドイツ文学研究者と意見を交換して知見を深めたい。
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Causes of Carryover |
当初予定していた文献複写の一部が間に合わなかったため、2019年度の研究費に未使用額が生じたが、次年度に執行予定。
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[Book] Tawada Yoko : On Writing and Rewriting2019
Author(s)
Doug Slaymaker,Brett De Bary,Naoki Sakai,Sigrid Wiegel,Christine Gizem Arslan,Paul McQuad,Madalina Meirosu,Yoko Tawada,Dan Fujiwara,Annegret Maerten,Sachiyo Taniguchi, Tingting Hui, Suzuko Mousel Knott, Tomoko Takeuchi Slutsky, Seungyeon Kim
Total Pages
283
Publisher
Lexington Books
ISBN
9781498590044