2021 Fiscal Year Research-status Report
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18K00499
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
谷口 幸代 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (50326162)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多和田葉子 / Kafka Kaikoku / 夜ヒカル鶴の仮面 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、前年度に引き続き戯曲作品を中心に調査分析を進めた。日本独文学会のシンポジウム「言語を逍遥する詩人、多和田葉子の文学をめぐって」での口頭発表、質疑応答をもとに論文にまとめ直し、日本独文学会研究叢書145号(土屋勝彦編)に投稿した。日本の近代化と異文化接触の問題を扱う戯曲における複数文化的トポスの設定を考察した。 また、多和田演劇をめぐる研究者と実演家の協働プロジェクト「多和田葉子の演劇 ~連続研究会と『夜ヒカル鶴の仮面』アジア多言語版ワーク・イン・プログレス上演~」(学校法人瓜生山学園京都芸術大学「舞台芸術作品の創造・受容のための領域横断的・実践的研究拠点」、研究代表者:谷川道子氏)のメンバーとして、連続研究会「多和田葉子の演劇」(全3回)、ならびに多和田葉子の演劇『夜ヒカル鶴の仮面』劇場実験連携フォーラム「多和田葉子の演劇」に登壇した。連続研究会では「夜ヒカル鶴の仮面」と日本の伝承との関連について個人発表を行い、またフォーラムでは多和田文学における同戯曲の位置づけについてドイツ文学の土屋勝彦氏と対話した。 この他に前年度からの継続作業として、多和田文学におけるトポスの展開を調査・整理する作業に従事し、データを更新した。この調査過程で得られた成果をもとに、作品発表、演劇化の動向、朗読、講演、パフォーマンス等の多和田の活動をめぐる事蹟を年次ごとにまとめた年譜や著書目録を作成した。成果の一部を『溶ける街透ける路』(講談社文芸文庫)に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、予定していた海外調査を実施することができず、その点においては研究計画通りに進めることはできなかった。そのいっぽうオンラインで開催された学会や研究会等に参加し、貴重な示唆を得て、研究に活かすことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
複数文化的なトポスとして開かれて演劇空間の分析を継続する。オペラ「あの町は今日もおまつり」を分析対象の候補としている。これと並行して、多和田が先行する日本語作家の作品を引用しながら新しい文学を創造する際、トポスの複数文化性の問題はどのように展開するのか、川端文学の引用を例に検討する。
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Causes of Carryover |
前年度に引き続き海外調査を実施できなかったことにより未使用額が生じた。年度内に調査が可能になれば計画を遂行する。
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