2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00499
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
谷口 幸代 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (50326162)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 多和田葉子 / 川端康成 / 演劇 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日独バイリンガル作家・多和田葉子の文学における複数文化的なトポスの諸相を明らかにすることを目的としている。2022年度に進めた研究の概要は下記の通りである。 (1)2014年にパリ日本文化会館・パリ第七大学で開催された国際シンポジウム「川端康成二一世紀再読―モダニズム、ジャポニズム、神話を超えて」における多和田の基調講演「雪の中で踊るたんぽぽ」(PISSENLITS DANSANT DANS LA NEIGE)を主な対象とし、多和田が、パリという日本の外で、「「日本」という冠」をのせた「日本文学」という括りではなく、日本語を母語としない書き手による文学作品を視野に入れたより広い見地から川端のテクストの読み直しを図った軌跡を追跡した。その成果を仁平政人・原善編『〈転生〉する川端康成Ⅰ 引用・オマージュの諸相』に発表した。 (2)多和田の書き下ろしオペラ「あの町は今日もお祭り」(作曲:平野一郎、演出:川口智子、於:くにたち市民芸術小ホール、2022年4月30日~5月3日)を観劇し、多和田の出身地国立を舞台とした本オペラにおける歴史や文化の表象に関する分析に着手した。 (3)多和田とジャズピアニスト高瀬アキとのパフォーマンス「メキシコは江戸より暑き国にて候」(2022年11月2日、於:早稲田大学)、「言葉と音楽のパフォーマンス―情熱と反復―」(2022年11月4日、於:都留文科大学)を鑑賞し、フリーダ・カーロの絵画を題材とした詩と音楽のコラボレーションにおいて、メキシコのフリーダ・カーロと江戸の浮世絵師葛飾北斎との時空を超えた交信の分析に着手した。 (4)ドイツ文学者の土屋勝彦氏や山口裕之氏らとの多和田文学をめぐる意見交換会(2022年11月2日、於:早稲田大学)に参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍に入ってから関連イベントがオンラインで開催されたり、多和田自身がオンラインでドイツから日本のイベントに参加したりする機会が増えたため、それらに積極的に参加するよう努めたが、予定していた海外調査はコロナ禍の影響で実施できなかったため遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に着手した「あの町は今日もお祭り」の分析を発展させる。2023年度日本演劇学会「歴史と演劇」において開催される多和田演劇をめぐるシンポジウムで同オペラに関する実践家と研究者をまじえた討論、上演が予定されているため、そちらに参加して知見を深めたい。 国内予定されている多和田作品の上演では、多和田葉子/ハイナー・ミュラープロジェクトで上演と研究会が実施された「夜ヒカル鶴の仮面」(演出:川口智子)の再演が予定されているので、観劇し、研究会で推進した研究のさらに進めるための材料としたい。 さらに海外での公演状況について可能な限り実地調査を進めたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行の影響を受け、海外調査を実施することができなかったこと、ならびに勤務校の改修工事に伴い図書の購入を予定通りには進めることができなかったことによる。 次年度はドイツへの調査出張を実施し、ドイツにおける多和田の活動や多和田作品の演劇化の実態に関する調査を進め、また関連図書の整備も併せて進める計画である。
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