2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K00507
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
李 郁惠 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (80399071)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 郷土教育 / 郷土言語 / 多文化主義 / 文化的多元主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、計画どおりに台湾文学の言語構成を把握すべく、図書や雑誌など中国語以外の言語作品の調査とその収集を行った。と同時に、先行研究を参考にしながら台湾社会における多言語、多文化の問題点を次のように洗い出した。 まず、中国語以外の言語教育の実施状況については、1990年代以降郷土教育思潮の一環として台湾語や客家語、原住民諸語の母語教育が組み込まれているが、どの言語においても発音記号や文字表記に関して統一した見解が得られず、各教育機関の決定に委ねられている。また、学習時間も週に1コマと限られており、結果的に読み書き能力どころか、オーラルコミュニケーション能力の養成さえも難しいのが現状である。 一方、台湾の多文化状況は各エスニックの間が平等な関係を保つ「多文化主義」型というよりも、圧倒的なマジョリティとそれ以外の複数のマイノリティが存在するいわゆる「文化的多元主義」型に近いものがある。これらは一くくりにして中華という従来の支配的な文化と相対するとき、マジョリティとマイノリティの間のバランスをどう取るべきか、また、台湾というナショナル・アイデンティティにどうつながっていくかなどの課題が浮上する。 以上の問題に注目しつつ、次年度以降は文学作品における多言語、多文化の表象分析に取り組んでいきたい。なお、その目標に向けた一つの試みとして、年度中に戦前及び戦後初期の日本語作品をテクストにファッション文化、特にチャイナドレスの受容に関する考察を発表した。2018年10月に「東アジアと同時代日本語文学フォーラム第6回上海大会」での口頭発表を経て、2019年3月に『アジア社会研究』第20号に掲載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画に沿って現地に赴き、出版状況の調査及び資料の収集や整理を行っているため。
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Strategy for Future Research Activity |
各言語で書かれた作品を収集するとともに、それぞれの言語の表記方法を確認する。日本語に関しては、これまで蓄積した知識を生かすことが可能と考えているが、台湾在来の言語に関しては、現地在住の研究者の協力を要請する方針である。
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