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2019 Fiscal Year Research-status Report

台湾文学の多言語性と多文化性に関する考察

Research Project

Project/Area Number 18K00507
Research InstitutionHiroshima University

Principal Investigator

李 郁惠  広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (80399071)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2021-03-31
Keywords多言語 / エクリチュール / 台湾文学 / 呉明益 / 自転車泥棒
Outline of Annual Research Achievements

今年度は、計画どおりに台湾文学作品における多言語性の問題に取り組み、分析の対象として人気作家呉明益が2015年に発表した『自転車泥棒』を取り上げた。この作品は戦前、戦中、戦後と激動の時代を生き抜いた人々の記憶を交錯させながら台湾の近現代史を描いている。中で主要言語である中国語を含め、計8種類の言語が使用、言及されていることに注目し、長期にわたる単一言語主義から解放された最新の状況を考察することにした。
まず、言語の表記方法を検討した結果、発音や意味が中国語に変換される東南アジアの言語を除き、台湾語やツォウ語、日本語、英語はいずれもアルファベットや仮名、漢字など原語のまま挿入されていることが分かった。一方、なぜそんなに多くの言語を取り入れたかについては、二言語併用者の存在をほのめかすためではないかという結論に至った。ここでいう併用とは、複数の言語を別々に操るというよりも、むしろ片方はメインで片方は片言だけでも混じり合って話すということを意味する。この点から本作に映し出された台湾という多言語空間は言語同士が鮮明な境界線を持たず、多言語の解放を匂わせる興味深いものだといえる。
次に注目したのは、物語の主軸となる自転車をめぐる多様な呼称である。考察により、戦前世代には日本語、台湾語母語話者には台湾語、戦後世代には中国語、年齢や言語の属性によって異なる言語の呼称が混在していることが明らかになった。また、その中から日本語、台湾語から中国語へといった時系列的変化が読み取れた。こうした細かい設定を生み出す背景には、戦前と戦後における二つの「国語」の入れ替わりと、戦後「国語運動」の中における「方言」の排除がある。つまり、その不統一さと変化の目まぐるしさが、言語同士のせめぎ合いを浮き彫りにし、これまでの言語の抑圧を物語るために意図的に仕組まれたものと考えられる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究目標である多言語性と多文化性を究明するための作品分析に両方取り組んできたため。

Strategy for Future Research Activity

最終年度は、違う時期の作品分析を加え、成果をまとめていく予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2020

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)

  • [Journal Article] 『自転車泥棒』における多言語的エクリチュール2020

    • Author(s)
      李郁蕙
    • Journal Title

      アジア社会文化研究

      Volume: 21 Pages: 29-53

    • DOI

      10.15027/49057

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] 台湾文学における多言語的エクリチュール2020

    • Author(s)
      李郁蕙
    • Organizer
      東アジアと同時代日本語文学フォーラム第7回台北大会
    • Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2021-01-27  

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