2022 Fiscal Year Annual Research Report
A Study of Multilingualism and Multiculturalism in Taiwanese Literature
Project/Area Number |
18K00507
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
李 郁惠 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (80399071)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 台湾文学 / 多言語 / 多文化 / 日本文学 / 複数言語使用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は3年の研究期間及び2年の延長期間中に台湾文学の言語構成を把握すべく、図書や雑誌など中国語以外の言語作品の調査とその収集を行いながら、文学作品における多言語、多文化の表象分析に取り組み、成果を上げてきた。 まず、中国語以外の言語教育の実施状況については、1990年代以降郷土教育思潮の一環として台湾語や客家語、原住民諸母の母語教育が組み込まれているが、どの言語においても発音記号や文字表記に関して統一した見解が得られず、各教育機関の決定に委ねられている。また、学習時間も週に1コマと限られており、オーラルコミュニケーション能力を養成するにとどまったことが確認できた。 一方、作品分析については、第1年度は戦前及び戦後初期の日本語作品に目を向け、ファッション文化、特にチャイナドレスの受容に関する考察を行った。第2年度は、2015年に発表され、主要言語である中国語を含め、計8種類の言語を使用した『自転車泥棒』という作品に注目し、長期にわたる単一言語主義から解放された最新の状況を明らかにした。第3年度以降は、新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していた中国語以外の言語による出版状況などについて現地調査を実施することができなかったが、インタネットを通じて図書館のウェブサイトにアクセス文献調査を行い、整理した。その成果の一部である日本語や日本文学の出版に関する部分を口頭発表した。 なお、延長した2年の間は、本課題の延長線で文学における複数言語使用の問題を引き続き究明する課題を構想するため、湯浅克衛の『棗』や井伏鱒二の『花の町』など日本の旧植民地地域を背景とした作品及びその中における多言語・多文化性を再読し、口頭発表を経て論文執筆に取り組んだ。
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