2018 Fiscal Year Research-status Report
日韓両国における中国短編白話小説の受容様相比較研究
Project/Area Number |
18K00510
|
Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
金 永昊 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (60712031)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 白話小説 / 近世文学 / 翻案 / 近世文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本と韓国における中国短編白話小説の受容様相を比較し、そこから見出せる日本と韓国文学の特質を究明することに目的がある。日本の江戸時代の場合、当時における現代中国語学、つまり唐話学が流行し、江戸では荻生徂徠のケイ園、上方では伊藤仁斎・東涯の古義堂がその中心的役割を担った。それに比べて、韓国の場合、文言についての研究は盛んに行われたものの、唐話学はあまり流行せず、一般庶民が本格的に白話小説の翻案作を楽しんだのは19世紀末から20世紀初期にかけてである。 このような事情から、本研究は漢文・朝鮮と日本の文献を地道に読むという作業が最も大事になっており、初年度は文献読解にほとんどの時間をかけた。特に、中国の文献を読むための『漢韓大辞典』(全15冊)を買うことにより、中国・日本で出版された漢字辞書は全部揃うことになった。また、関連書籍を購入し読むことによって、韓国で本格的に白話小説を受容した1910年代以降は、いかなる意味を持つ時期かについても理解を深めた。 そして、韓国国立中央図書館を訪問し、『夢決楚漢訟』の諸本を調査して、原典の「鬧陰司司馬貌断獄」と比較したり、東京大学で中村庄次郞訳『今古奇観』を複写し、『今古奇観』の翻案の質について研究を行っている。 したがって、昨年度は研究の初年度として本格的に研究をし始めた時期であったため、雑誌に発表するなどの実績はまだないが、今年度からその研究成果を発表したいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、漢文(白話文)を読解するためにかなりの時間を費やしており、その中で当初の計画以上に進んでいると判断できる。 例えば、韓国の『夢決楚漢訟』の関連資料として、宮内庁書陵部所蔵の『三綱行実図』を調べたことがあるが、これは英祖改訳本系統のうち、これまで学会に紹介されたことがないものであることが分かった。また、古書店からも『三綱行実図』を購入したが、これも同じく学会に紹介されたことがない英祖改訳本系統である。このように、本研究を遂行するにあたり、補助的な関連資料としてだけ考えていたことが、意外と大きな学問的意義を持っていることが分かった。この内容に関しては、今年度中に雑誌で報告しようと考えている。 その他、『夢決楚漢訟』の場合、原典となる「鬧陰司司馬貌断獄」との比較を通して、作者の創作意図について把握することが出来たため、今年度の後期に学会発表をしようと考えている。更に、当初予定していなかったこととして、『諸馬武伝』との関係も深いことが分かったため、更に研究を進めていきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、『夢決楚漢訟』「忠臣篇」関連資料として考えていた『三綱行実図』についてだが、雑誌で発表をするためには北京大学図書館で資料調査をする必要があるため、今年度中に調査に行って、その内容を報告したい。 現在のところ、「鬧陰司司馬貌断獄」の翻案作である『夢決楚漢訟』についての分析は最終段階に入っており、和漢比較文学会で発表する予定である。また、中村庄次郞による朝鮮語訳『今古奇観』についても、今年度中に雑誌に投稿する予定である。来年度は、「兪伯牙率琴謝知音」の翻案作について、韓国に出張に行って諸本調査を行い、その結果を学会で発表が出来ればと考えている。
|
Causes of Carryover |
初年度は書籍を購入し、読むことに専念していたため、予定していた使用額より少なくなった。今年度は、国内と国外の学会発表を予定しており、中国と韓国での資料調査に出かける予定であるため、そこに次年度使用額を使いたいと思っている。
|
Research Products
(1 results)