2021 Fiscal Year Research-status Report
日韓両国における中国短編白話小説の受容様相比較研究
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18K00510
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
金 永昊 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (60712031)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 白話小説 / 夢決楚漢訟 / 古今小説 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、『古今小説』第三十一巻「鬧陰司司馬貌断獄」(以下、原話)の韓国における影響作『夢決楚漢訟』についての文学的特質について研究を続けた。『夢決楚漢訟』では、原話の二倍を超える人物が登場し、一層豊かな内容を持つ物語に仕立てられているが、その中で、原話とは異なる転生の論理・歴史認識・人物評価・思想の問題が提起されているのは、『夢決楚漢訟』の文学的特質を考えるうえで非常に重要な要素となっている。 まず、『夢決楚漢訟』を貫く作者の創作意図は「前世での怨みを晴らす」ことであった。ここで、原話では、戚氏の息子如意は劉禅に生まれ変わるが、『夢決楚漢訟』の場合、如意の生まれ変わりは劉禅ではなく、原話には登場しない華キンに設定されている。そして、華キンは伏皇后(呂氏の生まれ変わり)を引きずり出し、苦しませることによって、前世での怨恨を晴らすよう判決が下される。 次に、原話では、韓信について高く評価しており、否定的な記述がほとんど見られない。それに対して、『夢決楚漢訟』では、原話には登場しないレキ食其・龍且・鐘離昧・樵夫のような人物が次々と登場して韓信に対する怨みを訴え、『三国志演義』の世界では周瑜・趙子龍・馬超・諸葛孔明に生まれ変わり、曹操(韓信の生まれ変わり)に対して復讐をすることになる。このように、『夢決楚漢訟』では韓信の過ちに対してもそれに相応しい処罰は受けるべきであったと評価している。 最後に、原話では「忠」の思想が顕著に見られるが、『夢決楚漢訟』では、韓信の訴えに対する蕭何の弁明などを見ると、「義」の論理が重要視されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のため、海外出張が不可能になり、本来予定していた韓国国立中央図書館や韓国国会図書館などでの資料調査が出来なかった。また、県外への出張も制限されていたため、東京大学・国会図書館などへの資料調査のための出張も出来なかった。したがって、コロナ禍以前に集めておいた資料の研究を続けるしかなく、新たな課題への挑戦が出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、資料調査のための出張がどれだけ自由になれるか分からないので、推進方策を具体的に述べることは難しいが、今のところ、コロナ禍以前に調査しておいた東京大学小倉文庫所蔵『今古奇観』の研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、海外及び日本における資料調査が出来なかった。また、学会開催も軒並みキャンセルとなり、出張も出来なかったため。
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Research Products
(1 results)