2020 Fiscal Year Research-status Report
「人新世」という地球史の概念による現代文学の分析と評価-その展望と課題
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18K00511
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Research Institution | Josai International University |
Principal Investigator |
芳賀 浩一 城西国際大学, 国際人文学部, 教授 (70647635)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 人新世 / エコクリティシズム / Anthropocene / 環境批評 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年欧米を中心に様々な立場から論じられている「人新世」(アントロポセン、人類世、the Anthropocene)の概念について、主に英語圏の人文学の書籍を中心に議論の流れや論点を抽出、整理する作業を行っている。 発表を予定していた学会が相次いでキャンセルとなり、また国際的物流がコロナ対策により停滞したことから資料の入手が大幅に遅れたことにより、整理の作業や成果の公開と検証が予定していたようには進まなかった。 この研究内容の一部を応用した成果として論文、共著書、学会発表が各1件挙げられる。2019年度に名古屋大学で行った発表「Debris, Garbage, and Radioactivity: Agencies of Waste in Post 3.11 Literature/瓦礫、ゴミ、放射能-ポスト3.11文学における廃棄物のエージェンシー」を整理して論文「東日本大震災後の小説と人新世における『ゴミ』、『動物』、そして『人間』―木村友佑『野良ビトたちの燃え上がる肖像を中心に』(Juncture No.12)とし、また2018年に台湾ISLE国際学会で発表した内容を共著Mushroom Clouds: Ecocritical Approaches to Militarization and the Environment in East Asia (Routledge, 2021)に収めることになった。 人新世の概念は実に様々な批判を受けつつも、その批判を含めて今後の人文学の方向性を示す有益な議論の場となっており、環境問題への対応で最も重要な地域となっているアジアから欧米が中心となって構築してきた人新世の歴史観にどのように関わり、介入することが出来るかが試されていると筆者は考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、本研究は2020年度が最終年度となる予定であった。2020年度中に人新世に関する資料の収集を終え、収集した資料の中で重要視してこなかったものにも分析の目を向け、「人新世」概念の変遷の全体像に迫りたいと考えていた。 しかし、新型コロナウィルスの流行に伴い、参加予定であった海外で開催される学会が中止される状況となり、さらに2020年秋に発表を予定していた国内開催の学会までもが中止となった。そのため、これまでの研究成果を関連する分野の研究者の方々に伝え、フィードバックを受ける機会を逸することとなった。また国際的物流の停滞によって一部資料の入手が大幅に遅れたことも研究の進捗状況に影響を与えた。 こうした理由により研究期間を1年延長することとなり、改めて「人新世」の概念が人文学の分野、特に文学研究に与える影響と今後のあるべき展開の仕方についての分析と考察をまとめ、研究会・学会における発表や論文等の形で社会に還元してゆきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度となる2021年度は、人文学の分野において人新世を論じた書籍資料の収集を終わらせ、その整理とまとめに力を注ぐ予定である。その中で人新世の概念形成に付随する問題点とエコクリティシズムによる人新世の意味の変容がどのようなものであるかを明らかにしたいと考えている。 新型コロナウィルスの流行に伴い対面形式による国際学会の開催は中止が続いているが、オンライン開催は増えており、そのような機会を捉えて積極的に成果を公表していきたい。 また人新世がもたらす問題意識と課題が今後の文学研究に与える影響と新しい文学批評の可能性についても具体的な作品分析を通して明らかにしていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
世界的なコロナウィルスの流行によって関係する学会・研究会が全て中止かオンライン開催となったため旅費の使用がなくなったこと、また国際的な物流が大きく滞っているため購入予定の書籍等の入手も大幅に遅れていることが主な理由である。
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[Book] Mushroom Clouds Ecocritical Approaches to Militarization and the Environment in East Asia2021
Author(s)
Doo-ho Shin, Catherine Diamond, Weibon Wu, Hsinya Huang and Syaman Rapongan,Shinji Iwamasa, Koichi Haga, Iping Liang, Young-hyun Lee, Simon Estok, Kathryn Yalan Chang, Kazuaki Odani
Total Pages
212
Publisher
Reutledge
ISBN
9780367371623