2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K00520
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 大厚 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (00272021)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 省略現象 / 最大削除条件 / 最小ステップ条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、研究目的である言語の経済性条件の検証に関して、以下の2つのことを行なった。
[1] 最大削除条件について、中国語でも観察されるかどうかを調査した。関連する文献の調査、データの作成や分析を行なった。その結果、中国語の動詞句省略と項省略の組み合わせでは、最大削除条件の効果が観察されることがわかった。つまり、同じ内容の関節疑問文に動詞句省略と項省略を適用した場合、前者は容認可能な文となるのに対して、後者は容認度が低い文になることがわかった。これは管見の限り、これまで観察されたことのない言語事実であり、また研究が進んでいる英語とは類型論的に異なる中国語で、かつ異なる省略操作の組み合わせでも当該効果が観察されるということは意義のある観察と言うことができる。これまでのところパイロット的な調査の段階で、本格的な調査と分析は2020年度に行う予定である。また、類型論的に上記の言語とは異なるダガラ語とバスク語でも当該効果が見られるかを調査するため、まずは関係する構文の調査を始めた。
[2] 最小ステップ条件については、1つの文に2つの数量詞が含まれるデータを作成する必要があり、まずは関連するデータの作成とそのための文献調査と検討を行った。中国語に関する先行文献には信頼できるデータに基づいた観察がなかなか発見できず、手探りの状態でデータ作成に着手した。その結果、中国語でも省略が適用した文は先行文との間で数量詞の作用域解釈において平行性が観察されることがわかった。今年度は次のステップとして、数量詞の作用域解釈で両義性があるデータを作成し、最小ステップ条件の効果の有無を検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は、本研究課題への補助金の申請時に予想していなかった役職に就くことになり、勤務時間の大半を校務と授業に取られることになった。研究にあてられるまとまった時間がほとんどなく、当初の予定よりやや遅れた進捗となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は本研究課題の最終年度となるが、まずは最大削除条件について、中国語において様々な省略操作の組み合わせで効果が観察されるのかどうかを明確にする。その上で、当該条件の定義や条件自体を見直そうとする近年の理論動向にどのような意義を持つのかを見極める。また、2019年度に始めたダガラ語とバスク語についても調査を実施する。 最小ステップ条件についても、母語話者インフォーマントが見つけやすい中国語を中心に考察を進め、関連するデータの作成と分析を実施し、当該条件の通言語的効果の有無を明らかにする。
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Causes of Carryover |
2019年度は勤務時間の大半を校務と教育活動にとられ、研究に使える時間がなかった。2020年度も同様の状況が続くことが予想されるが、できる限り研究時間を確保し、実施が滞っている国際学会での研究発表と謝金を使ったデータ作成に取り組む。
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