2020 Fiscal Year Annual Research Report
Reconsiderations of economy conditions in language
Project/Area Number |
18K00520
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 大厚 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (00272021)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 統語論 / 経済性 / 省略 / 最大削除条件 / スルーシング / 動詞句省略 / 項省略 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、変形生成統語論の枠組みの中で文の統語構造を作り出す際の派生に適用する経済性の条件について、その必要性および最近の統語理論内における位置づけを再検討し、人間の言語能力及びそれを包摂する認知能力における経済性の在り様を解明することを目的としスタートした。2020年度は最大削除条件の効果の有無を中国語を対象として調査した。 その結果、中国語では関節疑問節において疑問詞の顕在的な移動が任意に可能であり、顕在的な移動がある場合は同条件の効果が観察されることを確認した。従来主な考察対象とされてきた英語と同様に中国語ではスルーシングと動詞句省略が可能であるばかりではなく、英語とは異なり項省略も可能である。これにより従来当該課題はスルーシングと動詞句省略の組み合わせで検討されることが多かったが、本研究ではスルーシングと項省略、動詞句省略と項省略の組み合わせでも最大削除条件の効果の有無を検証することが可能になった。 検証により上記3種類の組み合わせいずれにおいても当該効果が確認された。スルーシングと項省略の組み合わせで同効果が出現することは、研究者自身の研究と他の研究者の研究において日本語のデータを用いた考察で指摘されていたが、動詞句省略と項省略の組み合わせを考察したのは本研究が世界で最初であると思われる。特に、この組み合わせでも当該効果が出現することは、スルーシングを特別扱いする近年の研究に異を唱えるものであり、最大削除条件の効果をいかに説明するかという研究課題に対して新しい視座を提示した。 期間全体を総括すると、当該効果を日本語と中国語で検証し、その存在を確認できた。これにより同効果が普遍的なものであることの証左が得られた。また、動詞句省略と項省略の組み合わせでも同効果が見られることは、最大削除条件をどのように他の一般的な原理から演繹するかという課題に新しい視点を提供した。
|