2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00533
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
千田 俊太郎 京都大学, 文学研究科, 教授 (90464213)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | パプア諸語 / ドム語 / 形容詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
當該年度には主として形容詞についての研究を進め、類型特徴や地域特徴の觀點からの考察を加へた。 ドム語を含む複數の言語について、形容詞の特徴を調査し、成果をまとめた。形容詞といふ品詞がある言語に認められるかどうかを判定する方法については、言語ごとに異なる基準と通言語的な基準がともに使はれる。個別言語内の形式的振舞により文法特徴を共有する複數の語類が最初に割り出されなければならない。その中に、形容詞と名付けるべき語類があるかどうかは、通言語的な意味特徴によつて見極めることになる。ドム語の場合には、名詞を後ろから修飾し、形態的には變化語形をもたず、單獨で項としてはたらくことがあるものが一つの大語類をなし、その下位類に次元、色、價値などを表す數十の語彙項目を含む閉ぢた類があり、これを形容詞と認めることができる。ドム語に比べて日本語や朝鮮語の形容詞はそれなりに多くの語彙數を誇るが、エスペラントの形容詞ほどの所屬語彙數にはならない。エスペラントの形容詞はヨーロッパに分布する印歐諸語をモデルにした設計・運用がなされてをり、名詞からの關係形容詞派生がさかんに行なはれる。形容詞が用言の一類に位置付けられる日本語や朝鮮語のやうな言語の場合には、形容詞は原理的に、「關係形容詞」の果たす役割を果たすことができないやうである。一方で、名詞的な形容詞だからといつて「サイズの大きな」形容詞になるとは限らない例がドム語などの示すところである。關係形容詞は典型的にヨーロッパの諸言語に見られる形容詞下位類とも言はれる。一方で、ニューギニア地域では「サイズの小さな」形容詞が多く報告されている。また、トク・ピシンの「形容詞」は、品詞としてのステータスの危ふいところがあるが、體言の中に、(連體修飾する際に)接尾辭 -pela が必要な下位類があり、形容詞的である。この形容詞的語彙も、その數は多くはない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
當初この研究で進めるはずだつた現地調査が行へない期間が長かつたため、新資料の收集を中心とする研究豫定を大きく軌道修正してゐる。ドム語の既存の資料によりながら類型的、地域的特徴について分析し、異なる形ではあつてもシンブー諸語に關はる成果を擧げようとしてゐる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は現地調査も念頭に再度研究の方向を修正しつつ本來の研究計劃に少し寄せることも考へる。ただし、コロナ禍の別の取り組みにも一つの區切りがつけられるやうにする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のために長い間現地調査ができず、同等の成果の出せる別の方向に軌道修正を行なつてゐるため。
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