2019 Fiscal Year Research-status Report
名詞化と補文化に関する通言語的研究ーユピック・エスキモー語を中心にー
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18K00534
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田村 幸誠 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (30397517)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 名詞化 / 体言化 / 機能類型論 / 認知類型論 / ユピック語 / ユピック・エスキモー語 / 能格性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究の課題はユピック・エスキモー語の名詞化及び補文化に関して、類型論的な観点から考察することにある。そして本年度は研究の2年目に当たる。1年目から2年目にかけての大きな研究成果として、Tamura (2019) "Nominalization in Central Alaskan Yup'ik" という論文をJohn Benjamins 社のTypological Studies のシリーズに掲載することができたことである。その成果を受けて、今年度 9月13日14日に名詞化 (nominalization) に関する国際ワークショップを立案・主催した(Osaka International Workshop on Nominalization/ Osaka International Symposium on Nominalization 大阪大学豊中キャンパス南部陽一郎ホールで開催)。海外から名詞化研究の第一人者であるScott DeLancey 教授 (Oregon 大学)とMasayoshi Shibatani 教授 (Rice 大学)に参加いただき、国内外の研究者10名が約10の言語の名詞化に関しての発表・議論を行った(申請者も司会と個人研究発表を行った)。名詞化に関して議論を集中的に行うことで上述の論文の発展すべき点が明確になるとともに、この点、特に能格性と名詞化に関して、Shibatani 教授及び大阪大学の鄭聖汝先生が編集する体言化に関する論文集に投稿した(11月に投稿、来年度6月に査読改定稿の締切)。当初の予定は、この9月のワークショップ及び原稿提出を経て、3月5日から25日まで、アラスカ州でユピック・エスキモー語の調査を行う予定であった。しかし、コロナウィルスの影響で渡米できず、新しい問題点に関する聞き取り調査が中断している状況にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上で述べたように、1年目の目標であった国際誌の掲載があり、その成果を発展させる形で2年目の研究調査を予定していたのであるが、コロナウィルスの影響で、アラスカ州において、ユピック・エスキモー語のフィールドワークができなかったことが大きな理由である。この点に関しては本報告書を作成段階においても目処は立っておらず、大変不安に思っている。フィールド調査に関しては、このウィルス問題が落ち着き次第すぐにでも現地に行こうと考えている。また、現在、主要インフォーマントの方(John W. Toopetlook 氏)とはインターネットを介した調査を継続して行っている。最低限の調査は継続できるが、どの言語でもそうであるように、言語現象にはvariationあり、そのあたりのことを他のインフォーマントの方々に調査・確認ができず、今この点に関して大変我慢が必要になっている。この点が研究の遅れに関する最も大きな要因である。また、今年度当初、今年度内に出版する予定になっていると聞いていた論文集が年度内に出版されないということも起きた(ゲラの修正は提出済み)。おそらくコロナウィルスの影響であると考えられるが、やはり、心配になっている。 次年度挽回出来るよう、出来る準備はしっかりしておきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上でも書いたが、私の研究課題は、ユピック・エスキモー語をフィールドワークし、その上で、類型論の観点から言語研究を行うことにある。現在コロナウィルスの影響で渡米し調査できない状況になっている。現在、主要インフォーマントであるJohn W. Toopetlook 氏にインターネットを介した質問を行っており、その調査を充実させつつ、ウィルスの沈静化の時期を待ちたいと考えている。論文に関しては現在査読中のものが1つであり、それを来年度中に合格させること(論文集の出版自体は来年度2月に予定されている)。また、来年度7月の英国認知言語学会という国際学会で発表が決まっているが(学会はリモートで開催される)、その学会発表、及び、それに基づく論文執筆投稿を年度内に行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
3月に行う予定であったアラスカ州でのユピック・エスキモー語の現地調査がコロナウィルスの影響で実施できなかったため、その準備費用も含めて、全て次年度の使用にした。次年度は研究調査の実施回数を予定の2回から3回に増やし、遅れを取り戻そうと考えている。
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Research Products
(5 results)