2018 Fiscal Year Research-status Report
A Cross Linguistic Approach to Possession, Existence and the Conditions on their Linguistic Realization
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18K00538
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
今泉 志奈子 愛媛大学, 法文学部, 教授 (90324839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤縄 康弘 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (60253291)
米田 信子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (90352955)
樋口 康一 愛媛大学, 法文学部, 客員教授 (20156574)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 「所有」と「所在」 / 経験者主語 / 事象(イベント) / ヴァレンス拡大 / 外部所有者表現 / ドイツ語 / バントゥ諸語 / 日・英語比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、本プロジェクトが研究対象とする「できごと(イベント)の所有」現象について、①経験者主語、②事象的意味をもつ名詞句、③ヴァレンス拡大、④所有文・所在文の主題と述部の特性の4項目について、日本語との比較対照を念頭に置きつつ、経験的・記述的アプローチを中心にデータベースの整備を進めた。
今泉(日・英語、統括)は、メンバー間の協働体制の基礎固めを目的とした調整を進め、年度末に「所有」と「所在」をテーマとした研究会(於:愛媛大学)を開催した。研究会では、「所有」と「所在」概念のオーバーラップ現象を見直すにあたり、先行プロジェクトの成果と課題を概観するとともに、経験者主語の意味と統語的ふるまいを例に「できごとの所有」を規定する語彙分解的アプローチの経験的・記述的妥当性を明示した。さらに語彙分解的アプローチにおける基本関数の在り方をめぐって、次年度以降の研究課題を提示した。藤縄(ドイツ語)は外部所有者表現としての与格構文を日本語の多重主語構文と対照しながら、この現象におけるイベントという意味論的単位の関与性を再確認し、その中間成果を複数の研究会やワークショップにて発表・報告した。米田(バントゥ諸語)は、タンザニアで調査を行い、所在・所有文を中心にスワヒリ語のコピュラ文のデータを収集し、コピュラ文が用いられる範囲について研究会にて報告した。また、存在文における主語の現れ方に関するデータを複数のバントゥ諸語から収集し、主語のプロパティに見られる言語差を検討した。さらに、バントゥ諸語の存在文における主語の現れ方をまとめ、主題性を中心に主語のプロパティに見られるバリエーションについて国際学会にて発表した。樋口(アルタイ諸語)は、中期語資料としてモンゴル語仏典のテキストを精査し同期の言語接触の様相を解明しつつそれが惹起した構造変化の詳細を跡付け、その成果の一部を公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトは、「所有と所在」をテーマとして、広範囲にわたる言語(群)を分析対象とする言語横断的調査・研究を目的するため、多種多様な分析対象と研究背景をもつメンバーで構成されている。したがって、初年度は、プロジェクト開始にあたり、メンバー間の協働体制の基礎を固め、問題の所在や理論的背景についての共通認識を明確にしたうえで、各メンバーが記述的研究をすすめることができるような基盤づくりに注力する必要があった。
具体的には、意味論的単位としての「できごと(イベント)」についての捉え方や、「できごと(イベント)の所有」を想定する語彙分解的アプローチの意味的基盤についてある程度共通認識をもったうえで、データ収集・調査・分析を進めていくことができるよう、メンバー間で調整しつつ、年度末には研究会を開催した。その結果、当初の研究実施計画に沿って上記のとおりの成果を得ることができた。特に、初年度末の研究会では、具体的なデータに基づく活発な討論が実現し、次年度に向けての具体的な研究計画を立てることができた点が有意義であった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の成果にもとづき、データべースの充実と理論的整備をはかる。夏までにメンバー全員によるワークショップを行い、進捗状況を確認するとともに、秋以降はこれに基づいた口頭発表や論文による成果報告をすすめる。
具体的には、初年度末の研究会の藤縄発表において問題提起された、ドイツ語の自由与格現象等に見られる「関与」の概念が、スワヒリ語をはじめとするバントゥ諸語(米田担当)や、アルタイ諸語(樋口担当)ではどのように言語化されているのかという点についての調査・研究をすすめる。さらに、夏頃までに開催予定のワークショップでは、今泉が日本語における間接受動文(多重主語構文との関連を含めて)、「見つかる」などの受動詞に相当する現象における「関与」の概念と、初年度に導入した「できごとの所有」による分析の可能性を導入し、メンバーによる討論を通して、データベースの整備をすすめる予定である。
さらに、上記の予定の進捗状況に応じて、アラビア語研究者を招聘した研究会を開催し、諸言語における「所有」と「所在」の両概念の連続性についての討論を行うべく準備中である。
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Causes of Carryover |
物品等の効率的な執行に努めた結果,残額が生じたが,次年度も引き続き,物品費などに使用する。
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Research Products
(12 results)