2019 Fiscal Year Research-status Report
A Cross Linguistic Approach to Possession, Existence and the Conditions on their Linguistic Realization
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18K00538
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
今泉 志奈子 愛媛大学, 法文学部, 教授 (90324839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤縄 康弘 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (60253291)
米田 信子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (90352955)
樋口 康一 愛媛大学, 法文学部, 客員教授 (20156574) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 「所有」と「所在」 / 経験者主語 / 事象(コト)の所有 / ヴァレンス拡大 / 外部所有者表現 / ドイツ語 / バントゥ諸語 / 日・英語比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、本プロジェクトが研究対象とする「できごと(イベント)の所有」現象について、分析対象とする言語を従来の英語、ドイツ語、バントゥ諸語、アルタイ諸語から、チベット・ビルマ諸語、アラビア語に拡大し、経験的・記述的アプローチを中心にデータベースの整備を進めた。 今泉(日・英語、統括)は、メンバー間の協働体制を調整し、2019年12月にワークショップ『所有・所在・できごと』(於:愛媛大学)を開催、初年度にメンバー間で共有したテーマ「コトの所有」を仮定するアプローチが「ニ」格主語を選ぶ所有文、動的な所有関係発生解釈を伴う非対格動詞、所有者・場所・被所有者の3項を選ぶ存在文等の諸現象に統一的な意味記述を与える可能性について報告、その成果の一部を研究会や論文として発表した。 藤縄(ドイツ語)は論文や口頭発表において、「コトの所有」という観点からドイツ語自由与格の意味論を所有代名詞による表現との対比において再検討し、所有物が所有されるコトによって限定されるという点にこの構文の本質があることを明らかにするとともに、所有物の限定表現(定冠詞、所有代名詞、不定・無冠詞)の分布を説明するモデルを提案した。 米田(バントゥ諸語)は、ウガンダとタンザニアのバントゥ諸語を中心に、主語の主題性と存在表現の形式との関係に関するデータを収集した。その結果、バントゥ諸語の中には、主語の主題性によって存在表現の形式が異なる言語と主語の主題性が存在表現の形式に影響しない言語があることが明らかになってきた。さらに前者はそのレベルが言語によって異なることも明らかになった。その結果について10月に東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所で開催された研究会にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトは、「所有と所在」をテーマとして、広範囲にわたる言語(群)を分析対象とする言語横断的調査・研究を目的するため、多種多様な分析対象と研究背景をもつメンバーで構成されている。今年度は、初年度に築いたメンバー間の協働体制が固まり、問題の所在について共通認識を持ったうえで各メンバーが記述的研究を進めることができた。
さらに、中間報告会を兼ねた2019年12月のワークショップでは、プロジェクトメンバーにくわえて、研究協力者として参加した樋口(アルタイ諸語)、Rasgur Mdzeschentshlong(チベット・ビルマ諸語)、エベード(アラビア語)もそれぞれ事例を報告し、具体的なデータ分析をめぐって活発な討論が行われるとともに、最終年度の成果報告に向けての具体的な計画を立てることができた点が有意義であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2年間の成果にもとづき、最終年度末の成果報告に向けてデータべースの整理と理論的整備をはかることが本年度の研究活動の主目的であることに変わりはない。 ただし、2月以降、現在(=5月末)に至るまでの期間は新型コロナウイルスによる感染症拡大を受けて、本プロジェクトも種々の変更と再調整を余儀なくされている。6月に予定されていた研究打ち合わせ(=データ確認と成果報告会の打ち合わせを予定していた)は中止せざるを得なくなった。海外での成果報告も見通しが立たない状況である。今後も状況の推移を注視しつつ、感染防止に最大限の注意を払いつつ、国内で可能な範囲での成果報告の準備を順次すすめる予定である。 具体的には、8月~9月までにオンライン会議にて各メンバーの進捗状況を確認、12月までに対面による研究会が可能になれば、12月にメンバーによる報告会、年度末に公開型の成果報告会を開催予定であるが、状況に応じて、公開を限定的なものとし、オンライン開催も視野にいれて準備を行う。
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Causes of Carryover |
2018年度に研究分担者(樋口康一)への配分額(185,000円)に対し、実際に使用された物品費と旅費の合計が184,926円であったために、74円の残額が生じた。また、2019年4月1日で樋口康一が研究分担者を外れ、配分を辞退したため、配分予定であった200,000円が研究代表者、今泉に配分されたが、新型コロナウイルスによる感染拡大を受けて予定していた出張が相次いで中止となったため、研究代表者(今泉志奈子)への配分額(510,000円)に対し、実際に使用された物品費と旅費の合計が218,600円だったために、291,400円の残額が生じた。
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Research Products
(7 results)