2019 Fiscal Year Research-status Report
Generative Grammatical Studies on Case and Morphology in Okinawan
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18K00539
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
吉本 靖 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (70284940)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 沖縄語の格 / 生成文法 / 依存格理論 / 有標主格 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の研究成果を令和元年11月に開催された日本言語学会第159回大会で「沖縄語の形態格:依存格理論による分析」と題して発表した。発表では沖縄語の格配列に関して生成文法の依存格理論による分析が有効であることを示した。まず言語類型論的には沖縄語は有標主格タイプに属することを確認し、Baker (2015)の依存格付与理論を基に、沖縄語の構造格である主格・対格・与格が次のように付与されることを示した。(1)主格は沖縄語では依存格であり、次の条件を満たす名詞句に与えられる:その名詞句が、同一スペルアウト領域にある他の名詞句によってc統御されていない。(2)沖縄語の音形を持たない対格は、標準日本語と異なり依存格ではなく無標格(またはデフォルト格)であると考えられる。(3)沖縄語の与格は日本語同様、固有格であると考えられる。なぜなら、この格を目的語に与える動詞は決まっており、構造的な位置により与えられる構造格とは異なると考えられるからである。 標準日本語では上記の3つの格に加えて属格も構造格であると考えられているが、沖縄語では主格と属格が同形である。すなわち、「ガ」か「ヌ」のいずれも主格でも属格でも用いられる。この事実に対して依存格理論は自然な説明を与えることができる。例えば「ウンジュガ オージ」(あなたの扇)という名詞句において、「ウンジュ」は、その名詞句内でもう一つの名詞句である「オージ」にc統御されていない。したがって有標主格の「ガ」が付与される。このことから沖縄語では主格と属格は実は同じ形態格であり、他言語との類推から主格と属格が便宜上分けられているだけであることが示唆される。また沖縄語では日本語同様、非定形節の主語にも主格が与えられるが、この事実も依存格理論では自然な説明が可能である。このような事から「依存格理論」の「一致による格付与理論」に対する優位性が見て取れる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の研究成果を今年度の学会で発表するという目標は達成したが、もう一つの目標である「パラメータの観点から見た日本語と沖縄語の格比較」研究の推進については、まだ検討すべきことがいくつか残っており、成果をまとめるまでには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度に取り組んだ「パラメータの観点から見た日本語と沖縄語の格比較」の研究をまとめ、その成果を今年度(令和2年度)、学会等で発表する。また、本年度は新たに沖縄語の述語の活用に関する研究を推進する。分散形態論の枠組みを使用することを予定しているが、もちろん、より良い分析が可能になる枠組みがあれば分散形態論には固執しない。沖縄語研究ではあるが、その分析が普遍文法に対して示唆することは何かという点を常に念頭において研究を推進していきたい。
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Causes of Carryover |
2020年3月6日~3月8日にカナダのバンクーバーで開催されたWest Coast Conference in Formal Linguisticsに参加予定であったが、新型コロナウイルスによる感染が拡大している時期であったため、急遽参加を取りやめた。そのため、学会参加のために予定していた旅費が余った。この金額は次年度、パソコン購入の物品費または国内外の生成文法学会に参加するための旅費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)