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2020 Fiscal Year Research-status Report

A Pragmatic Study on the Correspondence beween the Content of Discourse and Anaphoric Expressions, with Special Reference to the Levels of Information Sharing among Dialogue Participants

Research Project

Project/Area Number 18K00542
Research InstitutionYamaguchi Prefectural University

Principal Investigator

西田 光一  山口県立大学, 国際文化学部, 教授 (80326454)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2022-03-31
Keywords定名詞句 / 不定名詞句 / ことわざ / 定型表現 / 総称文 / 共通基盤 / 情報共有度 / 談話の内容
Outline of Annual Research Achievements

昨年度は前年度までの成果を「グライスの枠組みの動的な運用方法と失言が不適切な理由」として田中他(編)の1章として刊行した(計22ページ)。ここでは、失言は話し手と聞き手が情報の共有を欠く場合に特徴的に生じることを指摘し、Griceの会話の公理に5番目の公理が追加される可能性を探究した。
また、話し手と聞き手の情報共有度を鍵として本研究計画を総括することを目標に、次の3つの問題に取り組んだ。
第一に、英語の定名詞句と不定名詞句の違いは、話し手と聞き手の共通基盤(common ground)の有無に求められるが、共通基盤が与えられると、定名詞句は不定名詞句とは違い、会話の公理の範囲外の用法が可能なことが見えてきた。これは、会話の公理違反の効果が従来から言われる含意の伝達に限られず、コミュニティ内の人間関係の維持発展に資することを示す。この研究は海外の学会発表用に準備したが、コロナウイルスの世界的感染により、その学会が再延期になり、発表の場が与えられていない。
第二に、Goffmanの発話の産出フォーマットを考慮することで、ことわざが名詞句の形式によらずに総称の解釈を得て、照応に類した代名詞的解釈を担う理由を特定した。この成果は、日本英語学会の第13回Spring Forumで口頭発表した。
第三に、Wrayの定型表現の研究を参考に、談話の展開が情報共有されている場合、談話の内容が定型化する点に着目し、コロナ報道文を材料に、一定のキーワードが繰り返し同じ価値観で使われることで、表現、思考、行動が固定化する過程を明らかにした。これは「コロナの時代と対話」と題し、名嶋(編)2021の1章として刊行した(計38ページ)。
今年度は、第一の英語の定名詞句と不定名詞句の広告表現と第二の英語のことわざの代名詞的性質を論文にまとめ、情報共有度から談話の内容と照応表現の対応関係を解明することを目標にする。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

コロナウイルスの世界的感染により学会開催が延期になっているところがあり、十分に発表の機会が確保されていない。現在は海外に行かれないため、現地調査や資料収集も未実施のままである。昨年度はコロナ対策で勤務先の授業や会議の方式が大きく変更され、日程も不規則だったため、研究に充てらえる時間が十分に確保できなかった。旅費に充てていた予算は未執行になり、それに代わる執行対象も時間の余裕がなく見つけられなかった。結果として、3年計画の本研究も1年延長することに決めた。
オンライン開催の学会を中心に成果を発表しているが、研究者間の意見交換ではスムーズに行かないことが多く、今は成果発表よりは先行研究の読み込みにエフォートを充てている。
読み込みの範囲を広げた結果、研究開始時点では見えていなかったGoffmanの発話の産出フォーマットやLitovkinaのパロディ研究と定型表現の用法の関連が明らかになっており、次の研究計画での新展開を構想できるようになった。情報共有の表現方法についても、研究開始の時点とは考え方が少し変わってきた。当初は名詞句の限定表現や代名詞などの言語形式が情報共有のサインと考えていたが、英語学会の口頭発表で論じたように、ことわざは情報共有より広い概念でコミュニティの共通基盤に属した規範的内容を表す定型表現と言うべきである。ことわざは、特定の形式には表されないが、内容が情報共有されているため、結果的に情報共有の典型例の照応的代名詞に類した用法が与えられる。総称用法の不定単数名詞句が、その表面的な形式とは別に、代名詞的な分布を得るのも同じ理由による。
昨年度の成果から、情報共有の表現の範囲が、名詞句、ことわざなどの節、展開が固定化した談話という方向で拡張することが分かり、語用論発、文法着という慣習化の方向も見えてくる。1年延長したことを前向きにとらえ、より射程の広い一般化を導きたい。

Strategy for Future Research Activity

今年度もコロナウイルスの世界的感染が続くため、海外出張は無理なところもあると見込まれる。できるだけオンライン開催の学会を視野に入れて成果発表に取り組み、本研究計画を締めくくべく成果をあげたい。出張旅費に充てていた研究費の一部を資料の電子化の方で予算執行し、論文作成を効率的に進めていく。特に英語の定名詞句と不定名詞句の違いと、広告表現の文字通りの意味の有無の相関は、デスクワークの調査で一定の成果が得られると見込まれるため、鋭意、作業を進めたい。具体的には、商品広告の文脈で、不定名詞句は文字通りの意味で商品を表すのに対し、定名詞句は修辞的に商品のことを示唆するだけの用法が特徴的である。つまり、共通基盤がない不定名詞句は会話の公理に従い、情報伝達を重視して使われるが、共通基盤が与えられた定名詞句は情報伝達を離れ、ことばのユーモアに特化して使うことができる。
従来の言語研究は語用論を含め、言語形式の研究に主な関心があった。その反面、言語で表された内容の研究は扱いが手薄だった。コロナ報道の言説分析の成果を基に、共通基盤の表し方の研究は言説内容の研究へと発展の見込みがある。
また、情報共有の表し方と伝え方では、英語と日本語で違いがあることが分かる。情報共有の有無や程度の違いを、日本語では言語形式に細かく反映させるが、英語では局所的な語句の言語形式ではなく表現全体の内容と位置で表すことがある。名詞句の定性が名詞句の分布を制約するように、節よりも大きなレベルの表現の内容の定型性が当該表現の談話内での分布を制約することになるわけである。文文法から談話文法への連続的拡張は従前から言われているものの、この視野のもとでようやく現実化の見通しが得られるようになる。
さらに、単語や句といった局所的な形式に表されない情報共有の表現の分布制約を明らかにすることは、内容の理解を重視する英語教育に応用が可能である。

Causes of Carryover

昨年度はコロナウイルスの世界的感染のため、旅費を中心に予算執行ができなかったため。今年度はコロナウイルスの感染状況を考慮しつつ、出張可能な範囲で旅費を執行する。研究者間の意見交換もオンライン方式に切り替え、研究を遂行する。リアルな出張が無理な場合は、書籍や資料の電子化等に予算を充て、今年度末に研究計画を完成させる。

  • Research Products

    (4 results)

All 2021 2020

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results) Presentation (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results,  Invited: 1 results) Book (2 results)

  • [Journal Article] 山口県立大学国際文化学科における言語教育職養成の現状と今後の課題について2021

    • Author(s)
      林炫情,田中菜採,西田光一,スワンソン・マーク
    • Journal Title

      山口県立大学学術情報〔国際文化学部紀要〕

      Volume: 第14号(通巻第27号) Pages: 55-65

    • Open Access
  • [Presentation] Remarks on the Partial Pronominal Use of Proverbs in English and the “Simulation Effects” of Generic Pronouns and Clausal Generic Expressions2021

    • Author(s)
      Koichi Nishida
    • Organizer
      The English Linguistic Society of Japan 14th International Spring Forum, May 9, online
    • Int'l Joint Research / Invited
  • [Book] リスクコミュニケーション:排除の言説から共生の対話へ2021

    • Author(s)
      名嶋義直 (編著)
    • Total Pages
      360
    • Publisher
      明石書店
    • ISBN
      9784750352169
  • [Book] 動的語用論の構築へ向けて 第2巻2020

    • Author(s)
      田中廣明,秦かおり,吉田悦子,山口征孝(編)
    • Total Pages
      276
    • Publisher
      開拓社
    • ISBN
      9784758913768

URL: 

Published: 2021-12-27  

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