2019 Fiscal Year Research-status Report
WH演算子の特性とその内的併合に関する統語論的研究
Project/Area Number |
18K00553
|
Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
北尾 泰幸 愛知大学, 法学部, 教授 (90454313)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | WH演算子 / 内的併合 / 関係節 / 再述代名詞 / 長距離依存性 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は引き続き日本語関係節を、関係節主要部とそのθ位置の空所が局所的(local)な関係にあるものと、非局所的(non-local, long-distance)の関係にあるものとで場合分けをしたうえで、統語的移動および内的併合の観点から精査を続けた。局所的な関係節における弱交差現象・寄生空所の生起可能性・左枝分かれ移動などの統語的操作の分析から、関係節主要部の統語的移動があることを立証するとともに、再構築効果・連結性(reconstruction/connectivity effects)の観点から、日本語の局所的な関係節には主要部上昇移動(Promotion/Head-raising)が関与していることを明らかにした。 一方、非局所的な日本語関係節においては、弱交差現象が見られるものの、再構築効果・連結性が見られないことから、主要部上昇移動ではなく、演算子の「一致」(Matching)が関与していることを明らかにした。また複合名詞句の「島」を越えての関係節主要部の統語的摘出が許されるのは、再述代名詞残留(resumptive-stranding)があるためであるとする Kitao (2011) の分析を、pro などの音形を持たない再述代名詞(null resumption)の観点から更に精緻化した。 これら日本語関係節に関する分析については、日本英文学会関西支部第 14 回大会の英語学シンポジウムで発表した。 また他の非項位置への統語的移動現象として、英語分裂文における凍結原理(Freezing Principle)についての分析を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元年度は非項位置への WH 演算子の内的併合の分析のうち、分裂文の研究を少し行ったものの、ほとんどは以前より分析を続けている関係節の研究にとどまってしまった。その点で、当初の研究計画よりやや遅れてしまっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和 2 年度は、分裂文を中心として他の非項位置への WH 演算子の内的併合を含む統語現象について精査するとともに、「凍結原理」(Freezing Principle)など、統語的移動操作が適用できなくなる統語現象について詳細に分析する予定である。ラベル付けアルゴリズム(Chomsky 2013, 2015, etc.)の下での WH 演算子の内的併合の統語的仕組みとその特性を明らかにできるよう、研究を進めていきたい。
|
Causes of Carryover |
海外での研究発表を予定していたが、科研費初年度に計画段階では予定していなかった海外の学会での研究発表を行ったこともあり、本年度は海外出張を実施しなかった。そのため、特に旅費に関して、当初の予定よりもはるかに支出が少なくなった。
|
Research Products
(1 results)